「毎回、刺激的だった」とは、松下さんの言葉だ。

「『ザ・ベストテン』は、生放送だったからハプニングはつきもの。黒柳さんはケタケタ笑って楽しんでいるけど、タイムキープをする僕からすれば毎回ヒヤヒヤです(笑)。

 何が起こるかわからない。テレビならではのスリリングな展開も、視聴者を釘づけにした要因でしょう。加えて、視聴者参加型だった。一体感がありましたよね」(松下さん)

 テレビが娯楽の王様でなくなるにつれ、次第に音楽番組は勢いを失った──といえば、それまでだろう。しかし、そんな単純な理由ではなさそうだ。

 最後に矢沢さんは、こう締めくくる。

「歌が老若男女に向けられていた時代でしたよね。でも、今はピンポイントな層に向けて歌が作られる。そうなるとマスメディアであるテレビとの相性はよくない。テレビの問題というよりも、時代的な問題。懐かしくも楽しかった歌番組というのは、もう作ることができないんじゃないかな。でも、メディアが多様化しているからこそ、新しい形の音楽番組が生まれてもおかしくないよね」

お話を聞いたのは……

矢沢透(やざわ・とおる) 1949年神奈川県生まれ。’72年、アリス(谷村新司・堀内孝雄)にドラマーとして参加。『冬の稲妻』、『チャンピオン』等、数々のヒット曲を連発し、’78年には日本人アーティストとして初の日本武道館3日間公演を成功させる。活動を休止するも、’00年代以降再始動し、今なおファンを虜にする。

YUKINARI(ゆきなり) 1978年沖縄県生まれ。DA PUMPのメンバーとして、’97年『Feelin’ Good -It’s PARADISE-』でCDデビュー。日本レコード大賞(金賞)、日本有線大賞(有線音楽賞)など数々の受賞歴を誇る。’08年、DA PUMP脱退を発表。’10年、同じDA PUMPのメンバーだったKENや沖縄アクターズスクール出身のAIとともにヒップホップパフォーマンスユニット「琉-UNIT」を結成。

松下賢次(まつした・けんじ) 1953年東京都出身。慶應義塾大学卒業後、TBSに入社。35年間アナウンス部に所属し、野球、ゴルフ、サッカー、陸上などスポーツ実況を中心に担当。『ザ・ベストテン』など音楽番組の司会も行う。定年後はフリーとなり、イベントの司会や講演を行う。

渡邉裕二(わたなべ・ゆうじ) 芸能ジャーナリスト。松山千春『旅立ち~足寄より』CD、映画、舞台などを企画、プロデュース。主な著書に『酒井法子 孤独なうさぎ』など。