遭難しないために大切な“心構え”
都市近郊の低山はアクセスもよく、自然の中なら3密も回避できるのでは、と行楽を楽しむために訪れる人が増えているのだ。
「山の事故といえば崖から落ちたり、転ぶなどしたケガを思い浮かべるでしょうが、いちばん深刻なのは道迷いです。実は南アルプスや八ヶ岳より低い山のほうが道を間違えやすくて遭難しやすいんです」(前出・飯田さん、以下同)
特に注意を促しているのは1000メートル程度のハイキングや軽い登山で登れるような山だ。
「高い山の登山道には案内板がつき、道に迷わないような工夫が随所にあります。ですが、低い山は登山用でないことも多い。そのため整備がされていないこともあります」
低い山の場合、林業のための作業用の道が縦横に走っている場合があり、登山者はそこに迷い込むと遭難する。探そうと捜索隊が山に入ってもどこをどう探したらいいのかわからないというのだ。
「低い山は台風などで道がズタズタになっても予算がなかったり、登山道でない場合は人があまり通らないため整備が間に合わないんですね。
倒木があったり、地面がくずれたり、そこを人が歩くことで事故が起きる。去年来たから大丈夫、という考えも非常に危険です」
遭難しないためには心構えも必要だ。
「山岳遭難が発生する原因には事前の準備、知識、体力、装備品、これらが不足していることなどいろいろ理由が挙げられます。山岳遭難を防止するうえで大切なのはまず目的とする山を理解することです。
ルートや危険箇所、所要時間などを事前によく調べ、自分の体力と経験などを考慮し、何時に出発すればよいのか、どのような装備品が必要なのかを細かく検討することが必要」(前出・神奈川県警の担当者)
そこで登山時には次の7つの鉄則を守りたい。
(1)ルートの確認
「間違えたら元に戻る。それが鉄則です」(飯田さん、以下同)
みんなが間違えることで間違った道なのに、地面が踏みならされて硬くなっている。そのためそちらが正しい道だと勘違いしてしまいがち。ベテランでも見分けるのは困難なのだ。
(2)早めの救助を要請
「“まずい、下りられない”と思ったらすぐに救助を要請してください」
身体が動けば山の尾根に向かって登ること。尾根に出れば道にぶつかる可能性もある。だが、ふもとに明かりが見えても絶対に下ってはいけない。森が険しくなり、もっと迷うおそれがあるからだ。