「母親も掃除が苦手だったので、室内はいつも散らかっていました。家がきれいな状態、というのがよくわかりません。“汚部屋”状態になっているのが普通なんです」
金森さんはシングルマザー家庭で育った。母親は仕事で帰りが遅く、小さいころから親子のコミュニケーションはほとんどなかった。
そんな家での母親との関係はどこか居心地が悪く、大学入学時に実家を出た。以来、母親とは疎遠なままだったという。
ゴミでトイレに入れない
「一人暮らしをするようになって、自分の部屋も散らかりましたが、私は友達も彼氏も普通に家に呼べます。汚すぎて皆に引かれますが(笑)。でも、片づけを手伝ってくれることもあるんですよ」とあっけらかんと笑う。
しかし、その言葉とは裏腹に、友人関係には「かなり気を遣っている」と明かした。
「友達の前ではニコニコしていなくちゃ、と気を張っています。弱音もはけないし……だから学校や遊び、バイトから帰ってくると疲れて動けなくなってしまう部分もありますね」
心の奥底では、交際相手や友人には『捨てられたくない』と必死だった。寂しさから誰かといたいと願う気持ちは、「手放す」ことを拒んだ。
数回しか袖を通していない大量の洋服やカバン、メイク道具だけではなく、友達が置いていったという洋服類やゲームボードも次々に袋に詰められていった――。
捨てられずに溜まっていた物は金森さんの寂しさを埋めていたのかもしれない。
『潜入・ゴミ屋敷』の著者でジャーナリストの笹井恵里子さんはゴミ屋敷の整理、清掃作業を行う作業員として、さまざまなゴミ屋敷の整理清掃業に携わってきた。ゴミ屋敷になるきっかけをこう説明する。
「家に物があふれて生活できなくなる『ためこみ症』という精神疾患があります。病気の原因はよくわかっていませんが、遺伝的なかかりやすさをもった人が、失業や離婚などショックな出来事によって発症リスクが高まるとされています。そのほか発達障害や認知症、統合失調症、うつ病でも物をためこむ状態は起こります」
ゴミ屋敷というと「トイレ」が問題だ。扉の前が物であふれてば中に入れず、使用できなくなる。そのため住人は空のペットボトルの中に用を足すケースもあるという。ゴミ屋敷の現場では、そうしたペットボトルがいくつも見つかることは珍しくないとか。
実は前出の金森さん宅もトイレの前には物が溢れていた。
「トイレに行きたいときは近くのコンビニに行っていました」(前出の金森さん)