開発部長の他にも7つの役職を兼任していた亜紀子さんは'19年1月に全ての役職が解かれ、千葉の工場勤務となる。現在は自宅待機で社内の人間と連絡をとることも禁じられている。この処分を原告側弁護人に問われた藤井社長は、
「姉妹が社内で権力を持ちすぎて社員はみんな怯えている」
と、いうのだ。これはどういうことなのか。原告側弁護人が藤井社長を問い詰める。
ーー龍角散の株の77%を藤井家が保有していますね?
「ええ、オーナーカンパニーですから」
ーーあなたは、メディアの取材でも自分のことを独裁者だと言っていますよね
「それはメディア用に強く言っているだけで。トップダウンと申しますかね、トップドゥーイングというものでね」
姉妹が権力を持っていると言いながら、藤井社長が権力を独占しているということが明らかになるばかりだった。
中国進出の意図とは?
セクハラの次に今回の審議で時間を費やされた《中国進出》というキーワード。裁判で提出された証拠を見てみると、藤井社長が'17年11月には中国ビジネスについて否定的だったのに、'18年5月には中国ビジネスにのめり込んでいる姿が明らかに。さらにそのことで福田姉妹と対立していく様子も見えてきた。
証拠と証言から経緯をまとめると、
'16年4月
中国の『東方新報』の取材を受けた社長は《中国本土で販売するつもりはありません。龍角散ブランドの信頼性を損なう可能性があります》と発言
'17年11月
藤井社長は'17年の11月に香港の代理店宛に《中国では直接販売しない。香港が中国化することが予想されるため、香港市場からの撤退を検討する》とメール
'18年3月
亜紀子さんガンに罹患。休職する/TBSテレビ「林先生の初耳学」で亜紀子さんが「林先生が会いたい女性」の1位となり紹介された
(藤井社長は「君ばかり目立ちやがって、藤井家への冒涜だ」と激怒)
5月
ガンで闘病していた亜紀子さんが職場復帰。このころから藤井社長から亜紀子さんへの態度が硬化する/中国の『三九製薬』とコンタクトすると社長が発言。
7月
中国の『三九製薬』を社長と中国人女性Kさんが訪問
9月
『三九製薬』と直接取引きをすると社長が発言。このとき亜紀子さんと由紀さんは中国ビジネスへの懸念点を進言。「中国企業と秘密保持契約も諦結せずに交渉するのは危険です」(由紀さん)
12月6日 セクハラ疑惑の忘年会
12月14日~ 由紀さん、ハラスメントの第三者窓口を検討し聞き取りを始める
12月17日 由紀さん自宅待機を命じられる
'19年1月 亜紀子さん千葉工場勤務を命じられる
3月 由紀さんに解雇通知が届く
6月 由紀さん龍角散を提訴
8月 「龍角散」が『三九製薬』と提携したと発表
中国進出を進めたい藤井社長に提言を繰り返してきた福田姉妹。福田姉妹がいなくなった途端に中国企業と提携しているところを見ると、その渦中に起きたセクハラ騒動は福田姉妹を追い出す格好の口実ではないかと邪推したくなる。