晩年、認知症を患った母を介護ののち見送った阿川佐和子さん。介護の勉強をしながらも、まだ夫の介護への心の準備はできていないという加藤綾菜さん。身内の「介護」「看取り」についての本音トーク。
加トちゃんにすすめられた『看る力』
綾菜 実は、阿川さんの『看る力 アガワ流介護入門』という本、加トちゃんが先に読んでいて、私にすすめてくれたんです。「ずっとご両親の介護をされてきた阿川さんの話は、とても参考になると思うよ」って。すぐに私も読ませていただいて、目からウロコが落ちるような興味深いお話が盛りだくさんでした!
阿川 私は、そんなにたいそうなことをやってきたわけではないんです。ざっと振り返ると、父は足腰が弱ってきて自宅で転倒し、頭から出血したので病院に運んだところ、ケガはともかく誤嚥性肺炎を起こしているとわかって入院したんです。
それは奇跡的に回復したものの、体力はなくなっているし、そのころから母は認知症が進んでいたので、家に帰すことはできないということになりました。
綾菜 その当時、阿川さんはひとり暮らしをされていたんですよね?
阿川 そうです。最初は、娘の私が仕事を整理して実家に戻り、両親のケアをするしかないかと思ったりもしたんです。でも、友人知人に大反対されて。「そんなことをしたら、いずれあなたがつぶれるよ」って、介護経験者はみんな口をそろえて言うんですよ。
綾菜 いつまで続くのかわかりませんしね。専門家の方にお話を伺った際も「介護離職はしないと決めておくことが大事」とおっしゃっていました。
阿川 本当にそうだと思います。そこで、たまたま友人に紹介してもらった老人専門病院に父を移したのです。『看る力』の共著者でもある大塚宣夫先生が会長をされているところなのですが……。
綾菜 その病院が本当に素晴らしいんですよね。お父さまはずっとそこで過ごされたのですね。
阿川 '15年に94歳で亡くなるまで3年半ほど過ごしました。食べることだけが楽しみのような父が、そこの食事を「おいしい!」と。昔から「俺を老人施設に入れたら死んでやる」とまで言ってたのに渋々OKしてくれました。
綾菜 お母さまは、ずっと自宅で過ごされていたのですか?
阿川 私が子どものころに住み込みのお手伝いさんをしてくれていた方が70代になっていて、週に何回か来てくれることになりました。昔から母のことをとても慕ってくれていて、私にとっても姉のような存在。
心から信頼できる方に手伝っていただけたのは、とてもラッキーでしたね。彼女が来られない週末は、私と兄弟やその家族がシフトを組んで実家に泊まることにして、母を1人にしないようにやりくりしていました。