実兄と揉めた過去
プライベートで『ゴルゴ』の話を自分からすることはあまりなかったそうだが、やはり周りはその話を聞きたがる。
「数年前に外務省が作成した『中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル』と『ゴルゴ13』がコラボした際は、とても喜んでいましたよ。自分の仕事が国に認められたということを誇りに思っていらっしゃるようでした。
“『ゴルゴ13』の最終話はどうなるんですか?”としょっちゅう聞かれていたのですが、先生は必ず“頭の中にあるんだよね”と答えていました。今後はアシスタントさんたちが作品を引き継がれるようですが、先生が想定していた最終回を描いていただけるとうれしいですよね。
ちなみに、ゴルゴが劇中で報酬の振り込みを求めることで有名なスイス銀行の話になると“(自分は)スイスの銀行に口座は持ってないよ”って教えてくれました(笑)」(別の知人、以下同)
大御所漫画家にもかかわらず偉ぶることなく、ゴルゴのように紳士的でジョークもこぼしていたさいとう先生だが、時折、悩みに似た本音を周囲に打ち明けていたという。
「最期まで“雪解け”できなかったお兄さんとの関係を後悔しているんじゃないかな……」
'16年に亡くなった兄の發司さんは『さいとう・プロダクション』の出版部門が分社化された『リイド社』の代表取締役を務めていた。
「あるとき、さいとう先生と發司さんが作品の権利関係で揉めてしまい、長年仲違いの状態になってしまったそうです。先生自身、結婚を3回、離婚を2回経験していることをよく話題にして“人というものは分かり合えないもの。それは親子でもきょうだいでも一緒だよ”と、寂しそうに語っていたのが印象に残っています」
天国では兄弟仲よく、漫画の話題で盛りあがっていることを願いたい。