そこで用いられるのが、イントロをできるだけ短くする、さらには冒頭から歌いはじめる「ブレスイントロ」という手法だ。

 先の「Billboard Japan Hot 100」を見ると、Ado『阿修羅ちゃん』と優里『ベテルギウス』、YOASOBI『群青』ははいずれもブレスイントロ。BTSの『Butter』は開始4秒、Official髭男dismの『Cry Baby』は開始9秒で歌い始めている。

 首位を争ったBE:FIRSTの『Gifted.』は歌いだしは22秒からだが開始15秒からラップが入り、INI『Rocketeer』の歌いだしは17秒からだが冒頭からサンプリングボイスが入るなど、それぞれ冒頭からインパクトのある構成になっている。

和田アキ子もヒットパターンを踏襲

 サブスクやYouTubeでの再生回数に大きな影響を与えると、音楽業界で注目を集めているのがショート動画プラットフォームの『TikTok』だ。

 2020年に『NHK紅白歌合戦』出場を果たした瑛人の『香水』は、TikTokにて「歌ってみた」「弾いてみた」といった動画が相次いで投稿されたことがきっかけでブレイク。そのほかにも優里の『かくれんぼ』や『ドライフラワー』など、TikTok発のヒット曲が次々と誕生している。

「Z世代へのヒットを狙うため、TikiTokでバズりやすい構成の曲にするのは定石になりつつありますね。大事なのは15秒未満など短い時間でいかに耳に残って、覚えやすいフレーズをつくることです。

 例えば、『現代用語の基礎知識選 2021ユーキャン新語・流行語大賞』にノミネートされた、Adoの『うっせぇわ』は歌詞自体もインパクトもありますが、曲の構成も計算しつくされています。曲のトータルの長さは3分24秒、歌いだしは開始1秒、そして『うっせぇ、うっせぇ、うっせえわ』と繰り返すサビの最初の8小節が11秒に収まっており、TikTokが当初設けていた動画投稿できる15秒以内にその要素を盛り込んでいます」(Webライター)

 そのAdoを仕掛けたプロデューサーが手掛けた和田アキ子『YONA YONA DANCE』は、『TiKTok』での関連動画の再生回数が3億万回を超えるヒットに。この曲もトータルの長さが3分46秒、イントロから歌いだしまでは14秒、サビの最初の8小節が14秒という構成で、まさにヒットの定石に沿った作りになっている。

 日本は世界と比べても、まだCDが売れる特殊な国。なかなかサブスクなど配信サービスに目が向かない傾向にあったが、今やヒットを狙うにはサブスク対策は必須。また、サブスク対策を強化することは、国内でのヒットを狙うだけではなく、世界のトレンドに対応することにもつながる。年末に増える歌番組、歌い出しやサビの短さにも注目してみるのはどうだろうか。

90年代ヒットソング、曲の長さと歌い出し
90年代ヒットソング、曲の長さと歌い出し