浪費&不倫の夫だが妻の料理は手放さない
こういった「妻の料理が上手すぎて離婚してくれない夫」は、中高年の世代にも多く見られる。パートから契約社員に昇格したアパレル会社勤務の理恵さん(仮名・52歳)は、2人の息子が社会人になってから、夫(58歳)に離婚届を差し出した。
「離婚を決めたのは10年前ぐらい。原因は夫の浪費と浮気です。見栄っ張りの夫は、後輩や会社の部下だけでなく、近所のボウリング大会で一緒だった若い女性たちにおごってばかり。生活費を入れないこともあって、そのたびにやりくりをしてきましたが、息子の彼女ぐらいの若い女性と浮気したことがわかって、キレました」(理恵さん、以下同)
それから10年間。パート代を貯金し、離婚後の生活に備えて頑張ってきたかいがあって、正社員になる夢こそ叶(かな)わなかったが、契約社員として責任あるポジションを任されたという。
「やっと離婚できると喜んでいましたが、夫が承諾してくれません。理由は私の料理がヘルシーで美味しいからだというのです」
次男が小さいころにアトピーになってから、理恵さんはヘルシーで子どもが美味しく食べてくれる料理を作り続けた。結果的に夫の健康も維持されていたのだ。
「夫の同級生たちのほとんどががんや心筋梗塞、高血圧など、生活習慣病を患っていますが、夫は少し血圧が高いだけで、降圧剤も飲んでいません。健康維持は私の料理のおかげだと感謝し、絶対に離婚しないと言い張るのです」
夫は息子たちに泣きついて一緒に理恵さんを押しとどめようとしたが、夫の感謝の気持ちは遅すぎた。理恵さんは夫が離婚届に判を押さないなら、家を出ていく覚悟だ。
たかが食事、されど食事。食べるという“口の相性”を甘く見ていると、思いもよらぬところでつまずく人生もあるのだ──。
(取材・文/夏目かをる)
初出:週刊女性2021年11月23日号/Web版は「fumufumu news」に掲載