ジャニーズの“賞レース”撤退
1990年(平成2年)の第32回より、3年にわたって導入された制度が、大賞を「歌謡曲・演歌部門」と「ポップス・ロック部門」に分けたこと。これによって、レコ大受賞曲は2曲存在することになった。
平成に入ってからの、主な大賞受賞曲を振り返ってみる。
『おどるポンポコリン』B.B.クィーンズ(1990年、第32回、ポップス・ロック部門)
『君がいるだけで』米米CLUB(1992年、第34回、ポップス・ロック部門)
『innocent world』Mr.Children(1994年、第36回)
『CAN YOU CELEBRATE?』安室奈美恵(1997年、第39回)
『Dearest』浜崎あゆみ(2001年、第43回)
『蕾』コブクロ(2007年、第49回)
『Ti Amo』EXILE(2008年、第50回)
『フライングゲット』AKB48(2011年、第53回)
『R.Y.U.S.E.I.』三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE(2014年、56回)
『インフルエンサー』乃木坂46(2017年、第59回)
『パプリカ』Foorin(2019年、第61回)
そして昨年の大賞受賞曲が、『鬼滅の刃』の大ヒットを受けてのLiSA『炎』だった。
世相の反映が乏しいと思われがちな候補曲に関しては、近年のヒットチャートで欠かせない、48グループ、坂道シリーズ、LDHに加え、ジャニーズ所属のグループが同賞に参加しなくなった影響もあるかもしれないと、あるスポーツ紙記者は言う。
「90年にジャニーズの忍者が、『お祭り忍者』で歌謡曲・演歌部門でのノミネートを希望していたのにロック・ポップス部門で選出されたため辞退したことがありました。これを機会に、ジャニーズが賞レースから撤退したことも、レコ大衰退のひとつかと思います」
ジャニーズとレコ大といえば、前出の光GENJIの前年には、近藤真彦の『愚か者』が大賞を受賞し、過去の最優秀新人賞にも、田原俊彦、近藤真彦、シブがき隊、The Good-Bye、少年隊、男闘呼組など数々のスターが受賞している。
「ジャニーズが参加できていたら、キンプリやキスマイ、セクゾ、JUMPにKAT-TUNなど、新人賞は毎年総なめに近い状況が続いていたでしょう。大賞もSixTONESとSnow Manの一騎打ちの可能性もあり、少なくともジャニーズファンは注目するコンテンツとなっていたかもしれませんね」(同前)
前出の音楽ライターは、レコード大賞の本質的な部分にも注目する。
「もともとは日本作曲家協会によるレコード会社主導の賞として設立されたものですが、そこに“大人の事情”みたいなものを視聴者が勝手に感じてしまい、“どうせ出来レースだろう”と、冷めてしまっている部分もあるかもしれません」
第63回日本レコード大賞は12月30日、17時半から生放送される。今年を代表する曲は、いったいどれになるか。どれも同じとは言わず、注目してみたい。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉