気遣いができるようになれたらいいな
日本アカデミー賞最優秀主演女優賞ほか、国内外の映画賞に多数輝くなど、日本を代表する女優・寺島しのぶ(48)。作品クレジットにその名があれば“面白そう”と自然と思わされる魅力と引力がある。青山学院大学在学中の・92年に文学座の門を叩いてから来年で30年。女優として、大切にしているものを聞くと、
「やっぱり思いやりですかね。 余裕ができてくると、どんどんいろんなことが見えてくるんですよね。自分の演技うんぬんだけじゃなく、スタッフさんの動きとか、“組”のみんなの心の機微のようなものとか。うまくいってないなと感じたら、自分がそっとかけられる言葉が出てくるといいな、といつも思っています。だんだん言える立場になってきたから」
若いときには、それができずにもどかしく思っていた?
「そうですね。でも、文句を言う余裕もなくて、イライラしてましたね。ただひたすら耐えて、やっていたような気がします。若い子はなかなか言いたいことを言えないですからね。だから、思いやりをもって、いろいろなところに気遣いができるようになれたらいいなと思っていますよね」
4年前から歌舞伎の舞台に立っている愛息・寺嶋眞秀くんも9歳に。やんちゃの盛りだそう。そんな子育てに奮闘しながらの女優業の大変さについては、
「やっぱり子どもをちゃんと育てる。それができているかどうかはわからないけど。
今後、どういった塩梅で仕事をしていくのかはわからないですけど、でも常にスタンスは変わらない。いいものに出会えたら参加する。そこでもし、支障が出るならいろんな人に助けてもらって頑張る。それしかないですね。もう日々、綱渡りです。
子どもがいると大変ですよね。でも子どもから学ぶこともたくさんある。だから“濃厚な人生を生きている”と思えば、いいかなと思ったりもしています」
大女優は、とても幸せそうに見えた――。
●宮沢りえとの初共演
父親の愛人・浜田文乃役には宮沢りえ。
「よくここまで交わらなかったなって思いますね(笑)。宮沢さんも48歳。同年代だから逆に交わらなかったのかな? “今作のこの役でこういう形で出会うんだな”とは感じましたね。
宮沢さんは間違いなく日本の中のトップ女優さん。本当に感情が自然と湧いてくるように役になられている。
ただ、直接絡むシーンはそれほど多くはなくて。父親は三姉妹に愛情をかけなかったのに、こういう女性を見つけて安らいでいた。しかも子どもまでつくって。
藤代としては“もう何なの!?”っていうところですよね。文乃への直接の恨みではなく、父親を通じたその存在への思い。そういう意味では、どう接していいのかは難しかったですね」