また、一方通行ではない、双方向のコミュニケーションも大事だと朝田先生は強調する。例えば、会話などの双方向のやりとりでは、テレビを見るだけ、話を聞くだけといった受け身の行動に比べて広範囲に脳を使う。
「脳トレも、認知症先進国の米国ではネットやアプリを活用した双方向が主流。つまり、記憶や知識ではなく、社会生活のために必要な脳、いわば“社会脳”を保つことが重要なのです」
脳トレよりもぬり絵
さらに今、認知症予防効果で注目されているのが「マインドフルネス」だ。無心になり、副交感神経を優位にしてリラックスすることが、記憶を定着させるなど脳によい影響を与えると考えられているのだ。朝田先生のクリニックでも取り入れられている。
「マインドフルネスは、瞑想や腹式呼吸を行わなくても、軽作業を続けるだけでも得られます。手軽でおすすめなのは、ぬり絵。草むしりでもいいです」
朝田先生の患者さんで、ある会社の重役は、MCIと診断されてから仕事の合間に重役室でぬり絵をしているそうだ。
「MCIや認知症になると、感情のコントロールが苦手になることがあります。脳トレの点数を気にするより、リラックスしたほうが脳の健康にはいいはずです」
もちろん、生活習慣に気をつけ、認知症の最大の危険因子である糖尿病や高血圧を改善することは基本だ。そのうえで、生活のなかで脳を上手に働かせることがポイントなのだ。
「運動も脳トレも、続けるコツは仲間をつくること。友人や家族を誘ってもいいでしょう。会話を楽しみながら、一石二鳥の認知症予防策になりますよ」
MCIかも、と思ったら
<相談1>
何科を受診すればいい?
<回答1>
「もの忘れ外来」「脳神経科」「精神科」「メモリークリニック」などの名称で、認知症専門医のいる医療機関での受診がおすすめ。
※認知症専門医は、「日本認知症学会」のホームページで紹介されている。
<相談2> 病院が探せないなど困ったことがあったら? <回答2> かかりつけ医や、各地域にある地域包括支援センター、認知症疾患医療センターに相談を。市区町村の健康管理担当課でも情報を得られる。