保険の効かない“妊活オプション”

小松 私が治療に通い始めたころは、会社にお勤めしている女性にとっては、行きたいけれど行けないという人も多かったと思います。当時、早く閉まってしまう病院も多く、会社を休まなければ、治療を受けられないということも普通でしたから。

西川 休むことで誹謗中傷される可能性もありましたしね。

小松 不妊治療をしていることを言えない人もたくさんいましたよね。でも、今は少しずつよくなっているとは聞きます。まだ頑張ってほしい部分はありますけど(笑)

西川 国も'21年の1月から助成金制度の見直しなどをして、助成額や回数を増やしていますし。

小松 下世話な話になってしまいますけど、不妊治療は、ものすごくお金がかかるんですよね。私の場合は自由診療ということもあって、1000万円以上かかりました。検査も早いうちからしていれば、そこまでかからなかったかもしれません

西川 小松さんは45歳で着床前診断(PGT-A)※1をした4つの胚盤胞を凍結保存したそうですが、それまで流産は?

小松 凍結する前、43歳、44歳のころに化学的流産※2をしました。1回は胎嚢が見えたのですが、心拍までは見えなかったんです

西川 それはつらかったですね……。

小松 そうですね……。でも、それがあったので、もう少し頑張れば妊娠できるのかな、と思ったところもあるんですけど。

西川 それで、さまざまなオプションの検査も受けられたのですか?

小松 そうです。やっぱり、可能性が上がるかもしれないなら、すべてオプションをつけてください、って。アシステッドハッチング(胚が着床しやすいようにアシストする方法)や、培養するときにヒアルロン酸の入った液につけて着床率を上げる方法とか

西川 エンブリオグルーね。

小松 そうです! それも数万円かかりましたけど。もうこれが最後かもしれないと思ったら、できることはすべてと思ってしまって。

西川 そういったオプションは、厚生労働省で高度先進医療に選ばれないと、自由診療に扱われ、保険が利かないんです。来年、人工授精や採卵、胚移植や凍結移植が保険適用になったとしても、オプションをつけると混合診療になってしまいます。そうなると、すべてが自由診療になってしまう。

小松 混合診療については、議論にならないのでしょうか?

西川 声を上げている人はいるのですが、まだまだ難しい状況ですね。

小松 着床前診断もオプションだったんですね。私、自由診療だったので、何がオプションかわからなくて(笑)。

西川 オプションです。それに、治療法としてできるようにはなりましたが、いい受精卵を戻しても2回着床しなかった、または2回流産を繰り返したという条件を満たさないと、受けることができません。

小松 でも、経験した身からすると、すごく安心できたんです。染色体に問題がない受精卵があって凍結保存しておけば、移植を焦らないですみますから

西川 異常のない受精卵であれば、年齢に関係なく妊娠する確率は70%。流産も本来ならば50%くらいの確率が10%くらいに抑えられます。ただ、今は条件もありますし、自由診療なのですごくお金がかかります。検査できる人たちには朗報ですが、誰もが受けられる検査ではないですね。

※1移植前に受精卵(胚盤胞)の染色体を調べる検査で、流産率を下げ、胚移植あたりの妊娠率、生児獲得率を向上させる技術 ※2尿や血液の検査で妊娠反応が出たものの、超音波検査で胎嚢が確認できる前に流産してしまった状態