タモリの番組=長寿化しやすいワケ

「『タモリ倶楽部』があるし、私じゃなくてもいいんじゃないですか」(タモリ

 ゴールデンタイムの番組の司会就任を渋る芸能人はまずいない。皇さんはぼう然とした。

 本人は無自覚かもしれないが、無欲であることがタモリの番組が長寿化しやすい理由にもつながっているのだろう。番組のメインを務める人間がギラギラしていたら、観る側は疲れてしまう。油のしたたるステーキを続けて食べるのはつらいのと同じ。タモリは食べ飽きないコメの飯だ。

 振り返ると、2014年3月まで32年も続いた『笑っていいとも!』が終了する際もタモリは淡々としていた。あれほど長く続き、フジテテレビに大きく貢献した番組でありながら、誇らしい顔をするわけではなく、未練も口にしなかった。

『笑っていいとも』ギネスブック認定会見('02年)
『笑っていいとも』ギネスブック認定会見('02年)
【写真】『いいとも』“出待ち”でアルタ前が大変なことに!

 最終回スペシャルとして放送された同31日夜の『笑っていいとも! グランドフィナーレ 感謝の超特大号』での別れの挨拶もどこかクールなものだった。

「え~出演者、スタッフのおかげで32年間無事にやることが出来ましたが、まだ感慨というものがないんですよね。ちょっとホッとしただけで…」(『笑っていいとも! グランドフィナーレ』でのタモリ

 人気は落ちていない。ビデオリサーチによるタレントの人気度調査の最新版(2021年8月度)では20位のダウンタウン・松本人志(58)、19位の佐藤健(32)を抑え、18位。

 10代男子が選ぶ知性派タレント部門では松丸亮吾(26)と並んで4位に入った。各番組側が降板を言い出すことはないはずだ。

 現役を長く続けるに当たって、残された問題は健康面だけだが、タモリはずっと不摂生な生活とは無縁だったことで知られる。酒もタバコもやらない。もっとも、それは健康のためではない。単にどちらも好きではなかったからだ。

 タモリは今年9月、アンバサダーに就いた乳酸菌飲料の発表会でこう語っていた。

「今まで健康に気遣ったことがないんです」(タモリ

 76歳になるまで健康に対する欲もなかった……。しかし、後期高齢者となったことから、やらなければならないと思っていることがあると言った。

「第一は運動することですかね。それが一番気を付けていること。(具体的には)やっぱり散歩ですね」(同・タモリ

 運動を真剣にやろうとする気が感じられなかったが、「スポーツジムに通う」などと言わないところがタモリらしさなのだろう。

 タモリは「お医者さんから『水分不足ですね』って言われたので、それ以来は注意して水分を摂るようにしているんです」とも語ったものの、それ以外に健康面の問題はないそうなので、これから先も長く現役を続けるだろう。

 最近の民放は若い視聴者の獲得に躍起で、そのために若手芸能人を盛んに起用しているが、タモリは若い視聴者にも高齢者にも人気がある。後期高齢者の星だ。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立