例えば、デビュー以来、大きな仕事に次々と恵まれたことについては“ゴリ推し女優”と皮肉られ、人気小説のヒロインを実写化作品で演じれば“原作クラッシャー(破壊者)”と呼ばれたりした。

 デビュー曲を歌番組で初披露したときには、得意のダンスとは裏腹に音程をはずしまくり、途中で口パクに変えられる(?)という事態が発生。「放送事故か」と騒がれたし、昨年はバラエティー番組で手作り菓子を差し入れて「コロナ禍なのに手作りの土産って」と問題視された。

剛力彩芽の“スーパー”良いところ

 とはいえ、この一連の反応、彼女が言う「伝え方不足」によるものではないだろう。剛力彩芽という存在そのものが規格外すぎて、理解しがたいのだ。

 なにせ、オスカーが輩出した米倉涼子らをデビュー前に指導したベテラン講師が「とにかく強い。こんなに強い子は見たことがない」と証言したほど。剛力本人も自らの長所を「スーパーポジティブなところ」だとして「悩みがあっても寝たら忘れる」と言う。前述のデビュー曲披露の直後にも、SNSで「すっごく楽しかったの」とあっけらかんとしていた。

 そのためか、等身大の恋愛ドラマで共感を得るような普通っぽい役はいまひとつしっくりこない。『女囚セブン』や『陰陽師』(ともにテレビ朝日系)のように、ミステリアスで謎めいた役でこそ真価を発揮する。こういう女優は最近少ないから、ビートたけしや明石家さんまといった大御所にも目をかけられるのだろう。

 だとしたら、彼女は「伝え方」云々を気にするより、自分を貫き、その規格外っぷりで楽しませるほうが合っているのではないか。実際、そうしたおかげで前澤との恋愛はある意味、彼女の「代表作」ともなったわけだ。

 そういえば、新恋人の丘山は駅で急に踊りだしたりするという。まるで、かつてのランチパックCMにおける剛力だ。こうなったらいっそ、踊るカップルとして売り出してみてはどうだろう。昔の小柳ルミ子・大澄賢也みたいで、必ずしも縁起がいいわけではないけれど。

PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)