会社のスマホで飲食店のお得なクーポンをダウンロード
あゆみさん(33歳、仮名)は、とものりさん(36歳、仮名)とお見合い後、交際成立。ファーストコールがかかってきたのですが、そのときに、とものりさんが言いました。
「僕はLINEをやっていないので、メールのやりとりは携帯のショートメールでもいいですか?」
(今時LINEをやらないの?)とあゆみさんは思い、なぜやらないのかを聞いてみました。
「実は、ガラケーを使っているんです」
(今時、スマホでなくてガラケー?)とも思いましたが、人それぞれに考え方があるので、そこにこだわっても仕方がないかなと、自分を納得させました。そして、週末に新宿で食事をする約束をしたのです。
待ち合わせは、土曜日の18時、新宿の洋食店でした。予約席に案内されて着席をすると、注文をとりにきたウエイターに、とものりさんはカバンから取り出したスマホを見せて言いました。
「このクーポン使えますよね」
「お客さま、こちらは印刷したものをお持ちいただかないと、使えないんですよ」
「えっ、そんなことどこに書いてあるんですか?」
「このクーポンをスクロールしていただいて、最後に」
「本当だ。でも、こんな小さく書いてあっちゃわからないし、今回はこれを見せるだけじゃ、だめですか? あ、それか、ここのお店の印刷機で印刷してもらえませんか?」
「少々お待ちください。今、上の者に聞いてまいります」
あゆみさんは、このやりとりを聞いているうちに、割引クーポンをなんとか使えるようにお店の人に食い下がる男性の連れだと思われることが、とても恥ずかしくなりました。
まもなく店員さんが用紙を片手に戻ってきました。どうやらお店の印刷機で、クーポンを印刷してきたようでした。
「お客さま、今回はこちらをお使いください」
手渡されるクーポンを平気な顔で受け取っているとものりさんを見て、もう食事もせずに帰りたい気持ちになりました。
そして、「スマホは持っていない。ガラケーを使っているからLINEができない」と、ファーストコールで言っていたことを思い出しました。
「何にしますか?」
メニューを広げて差し出してくるとものりさんに、あゆみさんはたずねました。
「スマホ、持っていないと先日、おっしゃってましたよね」
「あ、これ? 会社のスマホなんです。今、お店のアプリ登録とかクーポンとかスマホでしかできないものがありますよね。そういうときは会社のを使っているんです。こっちにはLINEも入っているんですけど、さすがに婚活で交際になった女性とのやり取りをしているのが会社にバレたらマズイので、婚活はショートメールのやり取りにしているんですよ」
会社のスマホを私用で使っていることに悪びれることもなく、ニコニコ話す様子に、あゆみさんはドン引きしてしまいました。
「さて、何にしますか?」
「あ、あの、あまりお腹が空いていないので、お好きなものを注文してください。あと、今夜は体調も良くないので、早目に失礼させていただきます」
さっさと食事をすませて、この場から立ち去りたい。1時間弱の食事を終えて、新宿駅で別れると、あゆみさんは、電車に乗るやいなや、ホッと胸を撫で下ろし、交際終了の連絡を私に入れてきました。
ここに登場した男性たちは、会社の多額のお金を横領しているのではありません。ただ、婚活で使うお金を、会社にはバレない範囲で、経費で賄っている。ただそれを知ったとき、女性たちがどう思うか。その男性のセコさを、そこに垣間見てしまうのです。
きれいにお金を使う。多少、格好をつけても金払いのいい男を演じる。これは、婚活シーンでは大切なことです。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊『100日で結婚』(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル』