H氏にとって動物はお金
そして現在、状況はエスカレートしているという。
「今までは個人を対象に騙していましたが、H氏は鹿児島県内に大規模シェルターの計画を立ち上げたんです。その設立のための寄付も募っていました。シェルターがあればもっとたくさんの犬を収容できますし」
当初は同県H市で地権者には無断でつくろうとしており、地元の保護団体関係者らも巻き込んだトラブルに発展。すると今度は隣のK市にある空き地に移転させることにしたのだという。
空き地にはプレハブ3つと仮設トイレを設置。そこに茨城県、広島県、熊本県などの動物愛護センターより引き出した犬12匹を収容した。
「犬たちは移動用のケージに入れられたまま。建物は当初、電気もなく、水道は今もありません。
スタッフは朝少しだけ来て、ケージの掃除をして1日1回エサや水を上げたら引き揚げると見られています。夜は無人、犬たちは寒いプレハブに押し込められているんです」
ケージの大きさは犬たちの体には合わない窮屈な状態。そこから出されるのは掃除の数時間だけ。散歩に連れていかれることもなく1日の大半を狭いケージの中で過ごしているのだ。
「排泄もケージの中でし、ペットシーツもすぐには替えられないので糞尿まみれ。最近は建物の周辺のにおいがきつくなってきました」
関係者によると犬たちは朝、世話をする人が行くと一斉に吠えだすという。
「以前、夜中に近くに立ち寄ったときに鳴いていました。寒い日でした。寒くて助けてほしくて鳴いているんです。その声が切なくて、私も思わず泣いてしまいました……」
こうした現状に危機感を覚えた元ボランティアや全国の動物保護団体らは警察や愛護センターに再三訴えているが重い腰が上がらないという。
「行政は殺処分ゼロを掲げているので1匹でも引き出してくれるところには渡してしまう。それに余計な仕事も増やしたくないと、見て見ぬふり。ですが、引き出されても、押しつけられたり閉じ込められたり……。完全な悪循環です。ここで止めないとほかの市町村の愛護センターからも引き出されてしまう可能性はあります」
悪質な団体であっても書類の不備がなければ実態を調べられることもなく犬猫の引き出し登録がされてしまう。
「H氏の団体に限らず愛護センターで殺処分されなくても引き取られた先でエサも満足に与えられない状態だったり、ネグレクトされたりなどの虐待も横行しているんです」
被害者は今後、集団訴訟を起こすことも検討している。
「私たちが願うのは犬たちの幸せです。閉じ込められた犬たちを解放してやりたい。そして引き出した犬を押しつけられる人たちが増えないようにしていきたいです。押しつけられる頭数が増えれば多頭飼育崩壊にもつながる恐れがあります。里親は見つからないけど、愛護センターに戻したら殺されてしまう……と病んでしまう人もいます。H氏にとって動物はお金なんです」
関係者らは「H氏にはもう動物には携わらないでほしい」と訴える。この状況についてH氏にメールで質問を送ったが期日までに回答はなかった。
「危惧しているのは閉じ込められている犬たちの健康状態です。元気なまま里親の元に行けるのでしょうか……」