フェミニズムは当たり前の思想

石川 芸能界に限らないですよね。「自分はここにいちゃいけない」と決断した人が、逃げたと言われる。私、両親に対しても違和感があって。#MeTooのとき、ウチの母はだいぶ変なこと言っていました。違和感を抱く自分のほうが間違っていると思っていたんですよね。

 本でも親について触れています。この本を書いているときは、母のことを尊重しようと思っていました。自分のお母さんだから悪く言わないでおこうという気持ちがあって、ごまかしてきたんです。でも最近になって、やっぱりダメだって思って。母を嫌なんだってことを自覚して、まず、ちゃんと距離を置くことにしました。それで少しスッキリしたかも。

吉田 ご両親は過干渉だったんですか?

石川 あまり干渉しないほうでした。ウチ、親がどちらも創価学会なんですよ。

吉田 おお! 当然、読むのは聖教新聞ですか?

石川 ウチは聖教新聞と朝日新聞でした。中日と朝日が1年おきに変わるんです。いま考えると保守的な家庭でしたね。

吉田 すぐ「勤行が足りない」みたいな話になりますよね。

石川 父と母は創価学会で出会っていて、私は三代目です。父方も母方も、祖父母から学会員で。

吉田 家族がそうだと、まず逃げられないですから。家に仏壇があるのも、婦人部に入るのも当たり前という感覚で。友達と神社に行っても、鳥居もくぐっちゃいけないし。

石川 そうなんです(笑)。30歳くらいのころ、初詣に行くことになって、「ゆみ、鳥居くぐっていいの?」って同級生に言われて。彼女は覚えていたんですね。私はもう信仰していなかったから大丈夫だったんですけど。

吉田 選挙のとき、電話していました?

石川 電話していたし、家をまわっていました。ウチにはポスターが貼ってあるし、選挙も行っていました。創価学会は怖いみたいなことを大人になってから聞いて、そんなに言うほどひどくはないぞって思う部分もあった。

吉田 ボクの専門学校時代の友達が学会員でした。そいつと仲がよかったから、学会の勉強を死ぬほどしたんですよ。そいつは学会仲間とバンドもやっていて、周りの人間はみんな渡辺美里の『My Revolution』をカバーしてるって言ってました。つまり『人間革命』だから(笑)。

 どうでもいい話ですけど、ボクがライターの仕事を始めたばかりのころ、クリスマスと大みそかにテレクラに24時間籠って、寂しい男に電話をかけてくる女性とひたすらやりとりをするっていう雑誌の企画に駆り出されたときがあって。

 ひとり、話の合う人がいて、すぐに「この人は学会員だ」と思ったんです。会話に「題目」「折伏」みたいなフレーズを入れてみたら、すごく分かり合えて(笑)。「こんな話するの初めて。会いたい」って言われたんだけど、会ってどうなるんだと思って会いませんでしたが。

石川 私自身は学会の勉強も勤行もあまりしませんでした。

吉田 そこから抜け出したこともあって、石川さんはいろいろと気持ち的には楽になってきてはいるんですか? もちろん、しんどいことはありながらも。

石川 そうですね。精神状態はよかったり悪かったりしますけど、#MeTooする前より今のほうが幸せだなって思う。だから、もっとフェミニズムを知ってほしいんです。

吉田 本来、フェミニズムは当たり前の思想なはずなんですけどね。どう考えたって、社会的に女性のほうが権利を得ていないことが多いから、まだまだ解決しなければならない部分があるし、女性を優遇しないとバランスを取れないこともあるって話なのに、「それはフェアじゃない」と怒る人が出てくる。

石川 女性のほうが権利を得ていないという事実確認ができていないんです。そこからずれているんですよね。