一方で、「視聴者にそっぽを向かれたのは決してCMや枠だけの問題ではない」と嘆くのは、かつてキー局でプロデューサーを務めた元テレビマン。
「スポーツの“バラエティー化”にも一因があると思います。特に1990年代からスポーツバラエティー番組というジャンルが視聴者にウケて、芸能人と絡ませたり素顔に迫ったりと、アスリートがより身近に感じられるように。そんなバラエティーの“ノリ”はボクシングや『K-1』などの格闘技大会をも盛り上げ、そして不可欠な演出になりました。
例えば試合や競技が始まる1時間、2時間前から放送を始めて“世紀の一戦”“この後すぐ”などといったテロップを表示して煽る。また数字を持っている選手やチームの成り立ちや家族といったバックグラウンドにスポットを当てたり、過去映像を交えて“尺”を稼ぐのは当たり前。ネットも今ほど普及していませんでしたし、視聴率はおもしろいように伸びた」
局アナの実況にウンザリ
2000年代になると、スポーツ中継番組はさらに“ドル箱”と化す。特にサッカー日本代表は各局の争奪戦となり、2002年の「日韓ワールドカップ」は他国の試合でも高視聴率を記録。イングランド代表のデイビッド・ベッカムらヒーローを祭り上げては、現地にまで赴きプライベートを追った。
そして体操男子団体を実況した元NHKアナ・刈屋富士雄氏による「栄光への架け橋だ!」が記憶に残る、メダルラッシュに沸いた2004年アテネ五輪。当時は、この名実況に日本中が感動に包まれたものだがーー、
「以降のスポーツ中継では、サッカーや格闘技のごとくひたすらに名前を連呼したり絶叫したり、はたまた“何とか上手いことを言いたい”局アナの独りよがりの実況も目立ちます。そんなバラエティー番組のような実況や演出に辟易して興醒めする、また純粋にスポーツ中継だけを望んでいる視聴者が近年は多いのでしょう。
安住アナもNHKに“なんていうやり方だ”と愚痴る前に、いつまでも旧態依然を引きずっている、視聴者の期待とズレた民放のスポーツ中継の在り方を見直した方がいいのかもしれません」(前出・元プロデューサー)
2024年のパリ五輪ではぜひ、安住アナによる名実況が聞きたいものだ。