誤差が出やすい非接触型、なぜ?
コロナ禍の今、このような体験を多くの人がしているのではないだろうか。はたしてこれはどのようにすれば“正しく”測れるものなのか。ここまでのようなケースは、“入り口検温”の定番である『非接触型体温計』で起こる。文字どおり肌などに触れずに検温するタイプだ。この2年でこれらは一般化されたといえるが、ここまでのように非常に低い数値となることも多い。はたしてその意味はあるのだろうか。
「正直言って、非接触型の体温計は誤差が出ることが非常に多いです。ただ、結論としましては非接触型だとしてもやったほうがいいですね。誤差範囲を超えた熱のある人は確実にチェックできます」
そう話すのは、新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦先生。そもそもなぜ、非接触型の体温計は低い数値を出してしまうことがあるのか。
「検温に限りませんが、何についても正しく測るという行為は“基準点”を設け、“補正”することが必要です。
例えば温度によって赤や緑、黄色で表示される『サーモグラフィー』は、超低温で温度が変わることのない液体窒素を使い、その変化のない温度を基準点にし、それとの差を考慮し、補正をかけて正しい数値を測定します。今は液体窒素はあまり使われず、電子冷却器というものがカメラの中に入っており、それで補正をしていますが、理屈は同じです」
低温表示されても機械自体は正確
サーモグラフィー型の体温計を置いている施設もある。
「装置そのものはすごく正確に測れるものです。ただ実測値は差が出てしまうことがある。その要因はいろいろありますが、1つは寒い時季に外からやってきて測れば、肌は冷たくなっていますから、当然体温も低く計測されてしまう。また外に設置していればすごく寒い状況で計測することになるので計測場所の気温も関係する。さまざまな要因が考えられ、誤差を生みます。これらを考慮しないと装置がいくら正確でも正しいデータは得られません」
しかし、計測場所に専門家がいるわけではなく、次々に計測していくほかはない。
「現在の一般的な施設の計測では、誤差は出るものと考えなくてはなりません。より正確にしたいのであれば、建物に入ってから10分ほど待ってもらってから測る。汗などがひいてから測るといった方法をとるなどでバラツキが抑えられるでしょう」
外出時に誤差の出る要因をクリアすることは店も利用者も難しく、やはり日々家庭で測り続けるほかはない。
「体温は、室温に身体が慣れた状態で測る。外出から帰ってきて測るのであれば、10分間ほど身体を休めてから。
脇の下に汗が残っていると気化熱によって変わってしまうので、汗をよく拭いてから測る。
また、人間の体温というのは1日のうち、ピーク時の体温差が0.5度ほどあることが研究でわかっています。いつも決まった時間に、決まった場所で測るとなおよい」
おすすめの計測時間は?
「生活の中では安定しているのは起床時。感染予防のためであれば、体温は出勤前に測るべきなので、その意味でもやはり朝です。体調不良を感じたとき、同僚に迷惑をかけないように、体温計を持ち歩くのもおすすめです。ただ、体温計は今、粗悪な外国産も多く出回っています。聞いたことのあるメーカーのものを使うほうが無難でしょう」
日々の行い、日々の計測がコロナの感染を防ぐ第一歩。