薬を増やすほどに副作用も重層的に
高血圧の場合、血圧を下げる降圧剤を処方されるのが当たり前になっている。
「降圧剤の副作用は多岐にわたり、血圧を下げすぎることで頭痛やめまいなどが生じます。高齢者の場合は転倒を招いて骨折し、寝たきりとなるケースも」
心身の不調をきたすうつ病は抗うつ薬の治療が通例。しかも大量に薬を処方されることが少なくない。
「病気の症状なのか薬の副作用なのかわからず、薬が増えていく典型パターンです。当院の例では、うつ症状が改善して薬をやめたのち、『頭がもうろうとしていたのは薬のせいだった』と気づく患者さんは多いですよ」
このように薬の服用は危険と隣り合わせなのだ。
「ただし、自己判断で薬をやめるのも危険です。必ず医師の指導を受けるようにしてください。大前提として、飲み続けて害のない薬は世の中にひとつも存在しません」
治るどころか悪化のリスクが!飲み続けてはいけない薬
●高血圧
高血圧には降圧剤が処方される。「私がかつて視察した老人施設では、上の血圧が70にもかかわらず降圧剤が使われていた」と伊東先生。降圧剤の副作用は、頭痛、めまい、肝障害、心不全、貧血など多数ある。
●うつ
うつ病の治療薬には抗うつ剤が用いられる。抗うつ剤の副作用は、嘔吐、下痢、不眠、動悸、不整脈など。薬物治療ではうつ症状の改善を望めないことが多いため、必然的に薬の増加と服用の継続につながり、副作用のリスクは高まっていく
●がん
がん治療薬の抗がん剤は強い副作用で知られる。脱毛、吐き気、嘔吐、手足のしびれ、抑うつ状態、疲労感など、幅広い副作用に襲われる。「抗がん剤はがん細胞を破壊する効果は高い。ただ身体に対しても同様のダメージをもたらすため、耐えられない患者さんは多いです」
●アトピー
アトピー性皮膚炎の治療にはステロイド外用薬がおなじみ。皮膚炎を抑える高い効果がある一方、継続して使用すると、皮膚がうすくなる、ニキビができやすくなる、うぶ毛が生えるなどの副作用をもたらす。ステロイドには毒性もあるため、多用は危険
●花粉症
花粉症の治療には抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などが処方される。副作用として眠くなったり、のどが渇いたりすることが知られる。花粉症はこれら薬を飲んでも根本的な完治に至らない。その結果、薬の服用と副作用が延々と続いていく
●更年期障害
閉経前後、女性ホルモンの低下により、ほてりやイライラなどさまざまな症状を引き起こす更年期障害。「治療はホルモン剤を投与するホルモン補充療法が一般的ですが、投与年数や薬剤によっては乳がんや心血管疾患などのリスクが高まることが報告されています」