数千円で買えるという手軽さがアダに
小鳥が多く捨てられる理由として、犬や猫に比べて販売価格が安い点も挙げられると上中さんは指摘する。
「ペットショップでは子どものお小遣いでも購入できる、数千円という金額で文鳥やセキセイインコが売られています。気軽に買えますが、病気になったときの医療費は決して安くありません。
実際に“治療に8万円かかると動物病院で言われたから、健康な小鳥を購入しなおす”と言って、当施設に病気の小鳥を連れてきた飼い主もいました」
ペットショップで売れ残っていたコザクラインコを迎えた鳥好きのカメラマン・蜂巣文香さんは言う。
「コザクラインコのさくらこが5歳になったころ、初めて無精卵を産んだんですが、私は海外出張中で、夫から国際電話が突然かかってきました。『朝、さくらこがぐったりしていたから動物病院にきたら、卵管に卵が詰まっていて緊急手術が必要になるかもしれない。同意するよね?』と。処置が10分遅かったら命の危機があったそうです。もちろん同意しました」
結局、手術をせずに済んだそうだが、一般的にインコ類の卵詰まりの処置料や手術入院料は数万~10万円近くかかる。蜂巣さんは万が一の出費も考慮のうえコザクラインコを飼っていたが、その覚悟なく飼い始めてしまう人が多いのだ。
上中さんは、鳥は産卵について注意すべき点があるという。
「鳥はメス1羽だけで飼っていても、栄養状態が良好だったり、飼い主やおもちゃをパートナーと勘違いしたりすると、発情して無精卵を産むことがあります。卵を産み続けるとメスの体に大きな負担がかかるので要注意です」
ヒナを育てるのも簡単ではない。
「自由研究の題材だけでなく、SNSのネタづくりなど、軽い気持ちでセキセイインコや文鳥に有精卵を産ませる人も少なくありません。愛鳥の子孫が欲しいという人もいるでしょう。けれども、ヒナを育てるのは大変です。
母鳥の世話が行き届かない場合、1時間置きに人工授乳をしないと死んでしまいます。成鳥にも増して、温度管理も重要になります」
また、親鳥同士が近縁の場合に起こりやすいが、目が見えない、足がないといった奇形で生まれる小鳥もめずらしくない。小鳥レスキュー会にも、奇形が理由で一般家庭からヒナが持ち込まれるケースが後を絶たないという。メスを飼うならば無精卵も含めて産卵の知識、つがいで飼うならば繁殖に関する知識は飼い主の責任として必須だ。
ペットを販売する側も、その生き物の生態や飼養に関する正しい知識をしっかり伝え、飼う側も事前によく調べてから購入するようにしなければ、飼育放棄はいつまでも減らないだろう。