解決策よりも気持ちを理解
そもそも、なぜ人は見ず知らずの芸能人に悩みを相談したくなるのだろうか。
「相談者は『この回答者なら、自分の気持ちを理解してくれるに違いない』という考えを持っているためです」
そう解説するのは、精神科専門医の山下悠毅先生。相談者たちが求めているのは、具体的な“解決策”ではない可能性が高いという。
「仕事や健康、お金や人間関係など、人は生きる過程で多くの悩みを抱えています。しかし、その悩みを身近な人に話をするのをためらう人は少なくありません。なぜなら、多くの人が『自分の悩みは複雑であり、人に相談したところで意味がない』と考えてしまいます」
また、過去に「困ったことがあったら何でも相談して」と言われて悩みを打ち明けたのに「考えすぎ」や「それは甘えだ」などと返されてしまい、相談するのを諦めるケースもあるという。
「相談者の方は、頭の中では『解決してほしい』と考えつつも、心では『まずは誰かに自分の悩みを理解してほしい』と思っている。
そんななか、ラジオなどの相談コーナーで“聞く力”に長けている芸能人のコメントを耳にしたリスナーは『自分も相談したい』という心の動きにつながります。
そのため、まずは相手のツラさや悲しさを丁寧に受け止めたうえで、相手の悩みを事実に沿って整理するのが、優秀な回答者といえます。また、必ずしも回答者から解決策が提示されるわけではありませんが、自分に理解を示してくれた回答者が、具体的な行動目標を提示すれば『はじめの一歩』を踏み出せる相談者もいるでしょう」
聞く力と、背中を押すコメント力。人気を博している人生相談の回答者には、それらのスキルが備わっているのだ。人のいるところに悩みあり─。今後もさまざまな芸能人が、迷える人々の悩みに応えつづけていくのだろう。
【現在人生相談を行っているおもな芸能人】
・有吉弘行(47) 「くらやみ説法」(『EX大衆』)
・上沼恵美子(66) 『上沼恵美子のこころ晴天』(朝日放送ラジオ)
・田村淳(48) 「深夜の電話相談室」(YouTube『ロンブーch』)
・バービー(38) 「開けチャクラ! バービーのモヤモヤ相談室」(『Numero TOKYO』)
・山田ルイ53世(46) 「なやみのとびら」(日本経済新聞)
・渡辺えり(67) 「人生相談」(毎日新聞)
※掲載時に終了している可能性もあります
[取材・文/大貫未来(清談社)]