気づかぬうちに加害者になる
被害者が購入させられたのは、商材とは名ばかりの、ちゃちなDVD。長時間連れまわされ、契約するまで帰してもらえなかったというから悪質だ。
「私が付き添っていることがわかると、まるで事態を見越していたかのようにバッグから現金を取り出したんです。“お金は返しますから”とまくしたて、現金を手渡し、受領書のサインを受け取った途端、脱兎のごとく逃げ出して人混みに消えてしまいました」
その加害者であるイケメンとは、マッチングアプリを介して出会ったという。いまやアプリやLINEなどのSNSを利用し、犯行におよぶケースは珍しくない。
「ネット上のつながりは想定外の人間関係が築かれるのがポイント。トラブルが起きても親が把握するのは難しい。加えて、学校の先輩などの上下関係も利用されます。先輩が尊敬するという第三者まで登場し、言葉巧みに契約させるわけです。18歳成人になると、クレジットカードや消費者金融のカードもすぐ作れますから、その場で大きなお金が引き出されてしまう」
問題なのは、被害者になるだけでなく、気づかぬ間に加害者になってしまう可能性も増していること。その背景には、若者の収入減がある。
「20代や30代で、年収200万円台の割合が増えています。非正規雇用で生活が苦しい若者も少なくない。そのため一獲千金を狙って、あやしいビジネスに手を出してしまう若者が後を絶ちません。マルチ商法や投資詐欺に関わるようになり、友人や知人を巻き込んでしまったりする」
法律上は成人になるとはいえ、18歳は知識や社会経験に乏しく、未熟な場合が多い。悪質業者から守るには、どうしたらいいのか。
「まずは契約を急がないこと。それから何かを決めるときには、相手を徹底的に調べることです。また日ごろから、親に話しやすい環境を整えておくことも大切です」