珍回答はまだあった。回答者が4人1組となり、出される問題から連想する言葉が一致したらOKとなる「マジカルインスピレーション」でのこと。問題は「頭に『う』の付く長いモノ」だった。

 3人は「うどん」と答えて一致したものの、もう1人の回答は「うんこ」。いや、長いかどうかには個人差や体調の違いがある訳で……。答えたのは加藤紀子(49)。スタジオは大爆笑の渦に包まれた。

 9年間に登場したコーナーは実に250以上。口の動きとポーズだけで言葉を伝えていく「マジカル伝言バトル」や2つの映像の中の違いを見つける「エラーを探せ!」などが人気だった。すべて番組が独自に考えたものだ。

番組が終わった“きっかけ”

 クイズを考える中心にいたのは総合演出担当の五味一男氏(65)=日テレ系制作会社の日テレアックスオン執行役員・ジェネラルクリエイターだ。CM界から中途入社した人で、この番組に限らず、『投稿!特ホウ王国』(1994年~1996年)『エンタの神様』(2003年~2010年)など数々のヒット番組をつくり上げた。

 『マジカル』が視聴率低迷を前に終わったのは五味氏の意向だった。

「五味君が『もう出し尽くしました』と言ったので、その言葉を尊重し、終わらせました。日テレは昔から、そうなんです。番組をつくり上げた人の意向を最大限に酌む」(元日テレ幹部)

 だから視聴者から復活を望む声が上がっても実現せず、スペシャル版すら2001年12月に1度放送されただけなのである。フジテレビの『クイズ・ドレミファドン!』(1976年10月~1988年4月)のスペシャル版が今も改編期に放送されているのとは対象的だ。

『マジカル頭脳パワー!!』の収録風景('99年)
『マジカル頭脳パワー!!』の収録風景('99年)

 2012年10月から『マジカル』のコンセプトの一部を受け継いだ『快脳!マジかるハテナ』が放送されたものの、『新マジカル』などのタイトルにはならなかった。これも五味氏への敬意から。番組内容も似て非なるもので、ヒットには至らなかった。

 『マジカル』は今田耕司(56)、田中律子(50)ら、レギュラー回答者たちの個性も魅力だった。SMAPも準レギュラーだったのだから、豪華だった。

 1990年から1995年までレギュラーで出演した俵孝太郎氏(91)は所と並ぶ人気者となった。表情も口調も硬いものの、発想は柔らかく、難問・奇問をズバズバと解いた。その日の放送で一番の成績優秀者には「トップ頭脳賞」が贈られたが、これが所に次いで多かった。

 所はあまりに成績がいいため、心ないヤラセ説まで流された。だが、所が頭の回転が早い人なのは今では誰もが知るところ。それが生かされ、現時点でMCを務める番組は5本もある。『マジカル』での活躍は造作もなかっただろう。

 今、クイズ番組は学歴を前面に出し、知識を問うものばかりになった。ソニーなどが学歴不問採用を定着させ、学歴フィルターへの批判も高まる中、日本で最も学歴を重んじる場はクイズ番組ではないか。だが、視聴率はというと……

■テレビ朝日『クイズプレゼンバラエティーQさま!! 3時間スペシャル』(2月14日放送)世帯7・5%(個人4・4%)
■TBS『東大王スペシャル』(2月16日)世帯8・2%(個人5・1%)。

 時代が違うとはいえ、『マジカル』の半分にも達していない。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立