歌舞伎町のブラック・ジャック、異名の理由
「患者さんがひっきりなしに出入りしていて、若い女性患者が目立った。クリニックを開けたり開けなかったりと定かでなく、開いていると思って来院した患者さんたちが部屋の前をうろうろしたり、近くの階段に座りこんで待っていることがよくあった」
と同クリニックが入居するビルの関係者。
別のビル関係者はこう囁く。
「伊沢容疑者は怒りっぽくて揉め事が多く、警察が来たことは何回もありました。威圧的な言葉遣いで、大声で怒鳴りつけるので怖かった。巻き込まれないようにしよう、と気をつけていました」
身長170センチ前後のやせ型で青白い顔。一見、おとなしそうにみえるというが、唐突に好戦的な姿勢をとることも。
「すれ違ったときに挨拶をしたら、ずーっと睨みつけられた。ただ挨拶しただけなのに目線をそらさず異様だった」
と同ビルに出入りする男性。
伊沢容疑者=東京クリニックは、過去に大問題を巻き起こしたことがある。
都政関係者が振り返る。
「依存性の高い向精神薬『リタリン』を診療もせず大量に処方していた疑いが強まり、東京都と新宿区保健所が東京クリニックを立ち入り検査したのは'07年9月のこと。適応症のない患者にも言われるがまま処方しているなどと情報が寄せられていた。患者の家族から“薬物依存にさせられた”などと苦情が相次ぎ、保健所が何度も口頭指導してきた張本人が伊沢容疑者」
若者のリタリン乱用が社会問題になっていた当時、伊沢容疑者は医師資格のないスタッフに処方箋を書かせるなど安易に処方しまくっていたという。医師法違反(無資格医業)で罰金50万円の有罪判決を受けた。
「東京クリニックは'07年の1年間だけでリタリンを約102万錠も処方していた。小規模クリニックにもかかわらず全国1位の量。ネットなどでは“歌舞伎町のブラック・ジャック”とか“リタリン販売所”と隠語で呼ばれていた」(前出・都政関係者)
問題はそれだけではない。前出の社会部記者が言う。
「'06年に診察結果の説明を求めた女性患者に腹を立て、“説明してもわからないだろう”と言って髪の毛をつかんで頭を壁にたたきつけ、付き添いの夫にものど輪をくらわせる傷害事件を起こした。その数か月前、男性患者に暴力を振るって骨折させたばかりだった。'08年には元患者で交際相手だった女性にしつこく復縁を迫り、ストーカー規制法違反と脅迫で逮捕されている。“話をしなければお前を一生追い詰め破滅させてやる”などと脅していた。逮捕と書類送検を合わせて少なくとも計6回の困った男だ」
女性患者への傷害事件は有罪判決が確定し、厚労省から'2年の医業停止処分を受けた。'14年にも医師法違反で医業停止3か月を受けている。