このように、日本映画界では、俳優本人の口から、“監督によるスパルタ演技指導”のエピソードが語られることは珍しくないが、「あらためて振り返ってみると、俳優側からパワハラで告発されていてもおかしくないというもの、少なくとも、今の時代では、世間から問題視されるものが散見されます」(同・前)という。

 かなた監督以外にも、すでにSNS上では、さまざまな監督の名前が取りざたされている。特に目立つのが、CM業界の第一線で活躍し、映画界に進出した中島哲也監督。これまで中島監督は、『下妻物語』(2004年)、『告白』(2010年)、『渇き。』(2014年)など、数多くの話題作を世に送り出してきたが、『嫌われ松子の一生』(2006年)の主演・中谷美紀が明かした彼の撮影中の言動は「想像を絶するものがある」映画ライター)という。

「下手くそ!」と罵られて

「中谷は同作で、数奇な運命に翻弄される主人公を演じましたが、2015年放送の『A-Studio』で語った撮影現場のエピソードは、映画の内容以上にショッキングなものでした。なんでも撮影中、中島監督から怒鳴られ続けた中谷は、睡眠時間が1日1時間の日が続いたこともあり、『「辞めろ」とか「殺してやる」とか毎日言われていたので、途中で本当に嫌になってしまって、涙が止まらなくなって』撮影を放棄したというんです。

 ほかにも、中谷は公開当時から、撮影時のエピソードを各所で披露しており、撮影放棄のきっかけになったのは、監督の『あんたの感情なんてどうでもいいから』という言葉だったこと、また『顔が気持ち悪い』と罵声を浴びせられたことなども、つまびらかに語っていました。それでも中谷はのちに、中島監督に再会した際、同作の撮影期間について『今では豊かな日々だったと思います』と述べ、『思い出深い……何かの折に思い出す作品ですし、一生、私の原点になる作品だと思います』と断言しています」(同・前)

 また『渇き。』で、謎の失踪を遂げた女子高生役を演じ、スクリーンデビューを飾った小松菜奈も、中島監督の現場で涙を流したことを明かしている。

成田凌と小松菜奈
成田凌と小松菜奈

「小松は、ウェブメディア『cakes』のインタビューで、中島監督から何度も『下手くそ!』と叱られていたと語り、『あまりに何度もダメ出しが入ったので、「どうしたら私に加奈子が演じられるんだろう?」っていう感情がガーッとこみ上げてきて、思わず現場で泣いちゃいましたね』と振り返っていました。ただ小松本人は、中島監督のことを『すごく優しい方だった』と受け止めているそうです」(同・前)

 『フラガール』(2006年)、『悪人』(2010年)、『怒り』(2016年)などで知られる李相日監督もまた、俳優への厳しい演出が疑問視されている。『怒り』で、当時未成年の広瀬すずは、沖縄の米兵に乱暴される女子高生という難役に挑んだが、李監督からの言葉に「恐怖」を感じたことを、2021年11月放送の『情熱大陸』(TBS系)で語っていた。