松竹と歌舞伎役者の“関係性”
歌舞伎の興行を事実上独占している松竹から離れることで、その後の活動に支障は出ないのだろうか。歌舞伎評論家の中村達史氏に話を聞くと、
「歌舞伎は総合芸術。舞台や衣装、大道具などが高水準で交わって成立しています。もし、海老蔵さんが松竹を挟まず自由に歌舞伎興行を行ったとしても、あまりうまくいくとは思えません。海老蔵さんのファンに向けた舞台ならば、いいかもしれませんが」
リスクの大きい松竹離脱という選択だが、現実に起こりうるのだろうか。
「歌舞伎の基礎を作ったとされる團十郎の襲名披露公演は松竹の威信をかけた興行。全力で引き止めるでしょうから、襲名前に海老蔵さんが松竹を離れることは考えにくい。ただ最近の彼の活動からは、松竹と一定の距離を置いているように見えるのも事実。“傾奇者”として、周囲を驚かすような決断をくだす可能性はゼロではないかもしれません」(中村氏)
松竹に海老蔵の襲名披露の日程について問い合わせると、
「現時点で公表できることはございません。コロナ禍が収束に向かえば、改めて襲名の時期を検討することは従来からの方針です」
海老蔵が松竹から離脱するのではないかという噂については、
「弊社は各歌舞伎俳優の方々とは公演ごとに出演契約をいたしており“専属契約”は締結しておりません。海老蔵さんは、昨今は自主公演などにも精力的に取り組まれています。弊社としましてもできる限りの舞台製作のサポートをさせていただいておりますし、一昨年から今年にかけての松竹製作公演にも数多くご出演いただいております」
と、あくまで松竹と歌舞伎役者は自由で協力的な関係ということに触れるのみだった。
松竹の回答は海老蔵への信頼の証か。それとも─。