休憩時間は、たったの“6、7分”
給食の時間についてはもうひとつ、保護者に知られていないことがありました。それは「本当は先生たちの休憩時間なのに、実際はほとんど休憩できていない」という事実です。「僕も教員になるまで知らなかった」とH先生は話します。
「うちの中学校の昼休みは、準備から食べ終わるまでが30~40分で、残り約15分が遊び時間。実はこのうち45分は、僕ら教員も休憩時間なんです。でも実際は、その間も目の前にいる生徒たちに、『ハイ、このパン残ってるけど、誰か食べる人~?』とかやっている。長野県教職員組合の調査では、実際に教員がとれている休憩時間は平均でたったの6、7分でした。これは大きな問題だと思います」
なんと、これは気の毒です。我々が子どものころからそうだったので、特に疑問にも感じませんでしたが、自分がもし先生の立場だったら「昼休みくらい休ませてほしい」と思うのは当然でしょう。6分、7分なんかでは身体も心も休まりません。
「そもそも休憩時間が45分というのも、気になっています。教員の労働時間は7時間45分なので、法律上は確かに60分の休憩を与える義務はない。でも市役所勤務や国家公務員の友人に聞くと、勤務時間は同じ7時間45分でも、1時間休憩をもらっている人がほとんどなんです。それが教員は45分すら保障されていない上、残業前提の制度なので、おかしいよなって……」(※)
おお、そんなことは考えたこともありませんでした。おかしな状況におかしな状況が積み重なって、もはや気にする暇もない、というのが先生たちの現状のようです。
まずは子どもたちが、好きなペースで、適量の給食を食べられるようにしてほしいものですが、先生たちの状況も、このままではよろしくありません。子どもたちも、先生たちも、誰も無理をしないで過ごせる「給食タイム」を実現するにはどうすればいいのか?
そこでちょっぴりヒントになりそうなのが、神奈川県の公立中学校のG先生の話です。G先生の自治体では、お弁当を注文する子もいれば、家から持参する子もいるのだそう。一見ややこしく見えますが、先生の手は全くかからないといいます。
「お弁当の注文はオンラインだし、盛り付けや配膳の手間もありません。しかもお弁当をパートの方が配ってくれるので、特に負担はないですね」
お弁当、という部分はまったく真似したくないですが、「配膳の人を1人入れる(雇用する)」ところくらいなら、その気になれば真似できそうです。学校が地域や保護者からボランティアを募る例もあるようです(ただし、強制前提のPTAを使わないこと)。
ほかにも何か実現できそうな案はないか、保護者もいっしょに、知恵を絞ってみたいところです。
(※編集部注)労働基準法の第三十四条に基づき、「労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」とされている。
大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。ノンフィクションライターとして活動し、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。著書は『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)、『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)など多数。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
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