桂田社長が問われる罪

 この事故の責任は一体どこにあるのか、海事法律事務所『田川総合法律事務所』の田川俊一弁護士に聞いた。

「ポイントは浸水の原因だと思います。風や波の影響を受けて岩礁に乗り上げて船体が破損したのか、エンジン等が故障したのか。そもそもこの船が出航前から故障していたのか……。そこは船体が発見されないとわからない」

 事故当時、運航会社『知床遊覧船』の無線のアンテナは折れており、自社の船である『KAZUI』と無線連絡ができない状態だったという。さらに船に搭載されていた衛星携帯電話も故障していて、運航会社に大きな責任があるように思えるが、

「確かに通信機器の不備は安全管理体制の杜撰さを表してはいますが、今回の事故とは直接は関係ありません。たとえこれらがしっかり機能していたとしても、事故が起きなかったとは言えない。

 とはいえ、社長が船長に“条件付き”で運航を許可したことは責任を問われてしかるべきでしょう」(田川弁護士、以下同)

 では、桂田社長は今後、刑事責任を問われることになるのだろうか?

「刑事上の過失を問えるかどうかは、極めて難しいと思います。この悲惨な状況を考えると船長は亡くなっている可能性が高く、船体すらも見つかっていない。目撃者もいないですから、社長の過失を問えるような証言や証拠が出てこない。船長は被疑者死亡で不起訴になることもあるでしょう。もちろん社長は、民事上での損害賠償などの責任が問われることはあるでしょうが……」

 桂田社長は27日の会見に先だって開かれた遺族への説明会を行っていた。ところが、彼の発言が遺族の気持ちを逆なでしたのであろうか、

「うわべだけの謝罪に見える」

「顔が笑っている!」

 などの怒号が飛び交ったという。

 一刻も早い乗員・乗客の捜索と原因究明の捜査が待たれる。