実際に妊娠をしてくれる30代の現地女性とは顔合わせの食事をとった。卵子を提供してくれる女性はまた別の女性となった。20代で医療関係の学校に通う女性だったそうだ。

 妊娠する女性と卵子提供者を分けるには理由がある。山口さんの妻が話す。

「昔、アメリカで妊娠も卵子提供も同じ女性でやって、産後に“母性”が生じてしまい、“私の子どもだから手放さない”というケースが出てきて問題になって、それで別々になったという経緯があるそうです。うちの場合は卵子が無かったのでウクライナ人の女性に譲ってもらいました」

 山口家の代理母となった女性は、今回で4人目の代理母出産だったという。

「実益と人助けを兼ねてやっていると話していました。キリスト教的精神みたいものがあるみたいですね。困っている人がいるのなら助けてあげたいと。当然お金をもらえるし。現地の平均年収の4年分ぐらい相当するみたいです」(山口さん、以下同)

息子はウクライナ人とのハーフ

 現在、戦火にあるウクライナは、毎年2000人以上の子どもが代理出産で生まれる“代理母大国”だ。山口さんは現地で刻まれた“歴史”も目にした。

「ウクライナは素朴でいい人が多くて、街もなんだか日本の田舎というか、昭和の日本のような感じですごくよかったですね。現地を観光した際、すごく綺麗な教会がありました。ただそこにはモンゴルに攻められたときの跡が残っていました。いろいろな国に攻められてきた場所ですからね……。民族的におとなしい人が多いんだと思います。それを付け込まれて随分やられてきたんじゃないかという印象を受けました」

 山口さんが提出した精子は、その後受精卵となって代理母の子宮に移植し、子宮内膜に着床。今年の1月3日に現地にて産まれた。名前は山口太郎くん。ちなみに妊娠判定がなされたのは昨年の5月。その日は偶然にも山口さんの妻の誕生日だった。

「何か運命的なものを感じました。また、ちょうど結婚30年目だったんですよ。30年間、子どもを欲しいと思ってきたけど、できなかったので……」

 息子は当然ながらウクライナ人とのハーフとなる。

「(息子は)パッと見は顔立ちの“濃い日本人”という感じですよね。幸い、カミさんのお父さんとお母さんも、うちの親父とおふくろも可愛がってくれています」