ウクライナ語に反応する息子

ロシア侵攻直前のウクライナで、代理母出産にて生まれた太郎ちゃんを抱っこする山口敏太郎氏
ロシア侵攻直前のウクライナで、代理母出産にて生まれた太郎ちゃんを抱っこする山口敏太郎氏
【写真】赤ちゃんをあやす敏太郎氏、代理母出産を経験した有村昆と丸岡いずみ、高田延彦と向井亜紀

 山口さんは代理母出産の決断の前に、養子縁組も検討した。しかし……。

「年齢のためにできませんでした。問い合わせた際、年齢を聞かれ“50歳です”と答えたら、“じゃあダメですね”ってガチャンと切られました。その後、食い下がったんですけど、ダメでした。“もうすぐ定年退職で仕事なくなるでしょ”って。55歳や60歳で定年なんて考え方は古すぎますよね。そもそも自分はサラリーマンじゃないから、何歳でも仕事はできますから。収入がない若い世代もいるわけです。年齢で闇雲にダメというのは、あまりにも理解が浅いと思うんですよね。

 僕たちはありとあらゆる手を尽くしました。不妊治療の失敗。子どもができない。カミさんががんになる。養子縁組も断られる。もう四面楚歌の状態じゃないですか。代理母しかなかったんです。批判もありますが、子どもが2人も3人もいる人には僕の心の痛みはわからない。わからなくてよくそんな文句言えるな、と。もう少し他人の痛みを感じられる、他人が必死になって下した決断をよしとしてあげる気持ちを持つべきだと思います。法的にOKを出して、日本国内でも代理母出産を認めるべきです」

 夫妻の息子である太郎くんの“第2の故郷”となるウクライナは今、大変な状況になっている。

「ニュース映像を一緒に見ているんですけど、彼もずっと見ていて、何か思うところがあるのか、ウクライナ語でしゃべっている映像に反応するんですよ。息子は大きくなったら、ウクライナのために何かやるべきことがあるんじゃないか。そんな気がします。代理母出産というものは、いずれ何十年後かに日本でも認められると思うんですけど、息子にはその道を切り開いてほしい」

 山本五十六は彼の父が56歳のときに産まれたため、その名を付けられた。

「息子も55歳の親父を持ったわけです。僕はあと30年後くらいに死んじゃうわけですが、その間に社会の既成概念と戦うオヤジの姿というのを見せてあげたいと思っています。あと息子には戦隊モノなんかに出る役者さんになってほしいというのもあるんですよ。そのために赤ちゃんのうちに映画に出したいと思っているんですよ。親バカですね(笑)」