スマホに固執しなくていい

 勘違いしていただきたくないのは、逃げられるときはまず逃げるのが先決ということ。そのほうが安全だし、助かる可能性も高い。剣のようにスマホを持ち、相手に立ち向かえとすすめているわけではない。

「優先順位はちゃんとあります。最優先は逃げることです。逃げられなかったら、とりあえず抵抗しないそぶりを見せる。それでも襲ってきて、命の危険を感じたときに使っていただきたい技術なんです」(生駒さん)

 スマホ護身術に固執しないという意味で言えば、スマホ以外のものを手にしてもいい。ヘアクリップ折りたたみ傘パンプスなども有効だし、そこにある石を取ったほうが早いならそっちのほうがいいだろう。目に入ったものを握る、くらいの意識でいいのだ。

 もちろん、人に助けを求めるのもアリ。ただ、真っ正直に「助けてー!」と叫んでも、周囲の人たちから見て見ぬふりをされる可能性がある。

「そういう場合は、『動画撮って!』と声を上げるといいです。今はみんな、SNSに投稿したいものを探しているから、『何かあるのかな?』って人が集まって撮影してくれる。そうしたらもう、犯人は逃げるしかないですよね。
要は、襲われたら恐怖で動けなくなってしまうのではなく、本当はいろんな対処法があると気づいていただくのが、私の教える護身術なんです」(生駒さん)

 デジタルの武器でもあり、物理的な武器にもなりうる。スマホ1つあれば、今のままのあなたで身を護ることができる!

教えてくれた人は……生駒大貴さん ●大神拳師範。中学より独学で空手の練習を開始。童顔で細身のためトラブルに巻き込まれながら格闘技とストリートの違いを知り、'91年に大神拳を立ち上げる。ナイフ戦、複数戦などの経験を活かして護身術を指導中。著書『スマホ護身術』はKindleで購入可能。 大神拳:https://ohgamiken.com Instagram@selfdefense_ohgamiken

<取材・文/寺西ジャジューカ>