契約書はLINEやインスタのメッセージで
もちろん健全に運営している事務所もあるが、悪徳事務所も少なくないという。
闇営業が問題になった当時、芸能事務所とタレント間で、“契約書がない”ことが問題に上がった。それはライバー事務所でも……。
「ライバーというのは、“新しい職業”であることもあり、事務所に所属する際、契約書などきちんとした書面がないことがすごく多いんですね。ライバー事務所によるスカウト自体も、LINEやInstagramのメッセージで行われていることも多々。契約という大事な話が、それらのメッセージで行われており、書面に残されていない。
私が見たやり取りを例に出すと、“配信頻度のノルマがあります”、“ノルマを達成しないとこうです”といったことを、LINEで簡単に済ましている。そして“これでよければ返信ください”というような流れですね。報酬なども大事な話ですが、それ以外の負担などについて事前に決めておかなくてはならない話を決めないまま、事務所に所属した形となっているという状況がある。なんとなくなし崩し的に所属が決まっているというケースはよく聞きます」
ノルマの面で舟橋弁護士が受けた相談から一例を紹介すると、“月60時間配信しなければ罰金”というもの。計算上、毎日2時間必ずというノルマは重いのではないだろうか。
社会人ではない若年層もお金を稼ぎたいという欲求はあるだろう。そこで気軽に始められるライバーというのはかなり魅力的。しかし事務所側の“大人”とのやり取りが、LINEやSNSとなれば、なかなか親も目が届かない。
そしてライブ配信をするという行為は、少なからず承認欲求もあるだろう。その気持ちに付け込むように事務所は甘い言葉でスカウトをする。
「スカウトされて、きちんと契約内容を吟味する人もいれば、スカウトされて嬉しいと飛びついてしまう子もいる。事務所が出す条件に盲目的に返事をしてしまって、“所属”となってしまう。配信収入の一部が事務所に入りますから、ライバーさんを抱えれば抱えるほど、事務所にとっては美味しい。
多くのライバーを抱え、頑張っている事務所ももちろんありますが、十分にマネジメントができていない事務所も多い。下請け的な事務所に仕事を丸投げしているところもあります。ライバー側は、“なんで最初の人たちじゃなくて、違う事務所と話しているんだろう?”なんて状況になることも」
事務所に不信感を抱き、やめたいとなるが……。
「たとえば所属する際のLINEのメッセージで、“違約金がありますが、それでもいいですか?”と来て、それに対してOKした。そうなると、契約上は一応成り立ってしまいます」
“途中解約が出来ない”、“解約するには違約金がかかる”、“解約後、数年間は活動できない”。ライバー相談者たちの悩み。このような理不尽な言い分は、法律的にまかりとおるのか。