「誰かがここに来て手を合わせてくれるのはありがたい」

 実際に樹木葬のようすを見学するため、記者は東京都小平市、東村山市、東久留米市にまたがる『都立小平霊園』を訪れた。2012年に都営としては初めて樹木葬をスタートさせた霊園だ。

 広大な敷地の約半分が墓所で、そのほかは緑豊かな公園として地域の人の憩いの場になっている。その一角に樹木葬用の敷地があるが、一見すると献花台があるだけの広い緑地といった雰囲気で、遺骨は地下の共同埋葬施設に納められているという。この日、お墓参りに来ていた有田雅代さん(小平市在住・82歳/仮名)に樹木葬を選んだ理由を尋ねた。

「夫の実家がある山梨県に先祖代々のお墓があって、10年前に亡くなった夫も最初はそこに入っていました。ただ、高齢になりお墓参りにもなかなか行けないので、7年ほど前にここの樹木墓地に申し込み、夫の遺骨を移したんです。夫も私も自然が好きで、休日にはよく一緒に登山をしていたので、緑が多いところで眠れるのは夫もうれしいんじゃないかと思い、樹木葬を選びました。

 
献花台にお花を手向けて手を合わせるだけなので、お墓参りもとても楽。月に2回ほど、散歩を兼ねて夫に会いに来られるようになったので、ありがたいですね」

 有田さんには子どもはおらず、ご自身も亡くなった後は同じ場所に入る予定だという。跡継ぎがいない点でも樹木葬は理想的だったそうだ。

「合葬にはなるんですが、自分が亡くなった後も誰かがここに来て手を合わせてくれるのはありがたいですね。あとは、墓石が立ち並ぶような墓地とは違って樹木葬の敷地はお化けが出てきそうな怖いイメージがないのもいいところです。私、とても怖がりだから(笑)」(有田さん)

 社会の変化とともに多様化するお墓の在り方。現代のニーズを捉えた樹木葬は、今後も人気が高まりそうだ。