ほかにも動線確認、トイレ掃除
ダンスの練習のほかに時間がかかるものとしては、「かけっこの並び順」や「競技ごとの入退場」の練習もあげられました。つまり「見栄え」が重視される傾向があるようです。
「5月の運動会は、1年生にとっては入学してすぐなので、他のクラスの子の顔までわからない子もいます。『誰の隣に並ぶ』といってもなかなか覚えられなくて、時間がかかってしまったことがありました」(千葉県 公立小学校K先生 30代)
「学年主任だったときは、種目ごとの入退場の動線を確認するために校庭の図面を起こして『ここから入って、こう進む』といった確認をしていました」(長崎県 元公立中学校Y先生 60代)
そんな作業もあったとは。たしかに言われてみたら、我々も子どものときに「かけっこの並び順」や「入退場」をさんざん練習したはずですが、すっかり忘れていました。それに子どものころは、先生たちが裏でどんな「お膳立て」をしていたかなんて考えもしなかったものです。
運動会当日は、会場以外でもいろんな作業が発生します。たとえば「トイレ掃除」や「駐車場の誘導」など。
「教員たちが合間をぬってトイレ掃除をしていましたが、大勢の人が見に来るので大変でした。駐車場の誘導をしているPTAの保護者の人たちもいましたね」(長崎県 元公立中学校Y先生 60代)
なるほど、筆者もPTAで運動会のトイレ掃除をしたことがありますが、知られざる作業はほかにもいろいろとありました。
トイレまで土足で入れるよう廊下にシートを敷く。トイレの案内板やタバコ禁止の注意書きをあちこちに設置する。当日は、間違った場所に自転車を停める保護者に注意をする。こういった作業は、学校が保護者に直接ボランティアを募るのがいいように思います。
練習期間は、疲れてしまう子も
運動会の前は、練習時間以外にも影響が出ていることがわかりました。
「練習期間は、子どもたちが荒れがちです。疲れてしまうせいかトラブルが起きやすくなったり、先生もきつい指導になってしまったりして、教室の雰囲気が悪くなることもあります。でも運動会の練習が終わると、それがピタッとおさまる(苦笑)」(神奈川県 公立小学校U先生 30代)
「低学年の子は特に、練習で疲れちゃうので、いったんお昼寝をさせてから、午後の授業をしたこともあります」(千葉県 公立小学校K先生 30代)
「集団競技の作戦会議にも、意外と時間をとられます。『台風の目』(団体競技)をやるときは誰を中心にするかとか、外側を走る脚の速い子を誰にするかとか、休み時間などに相談しています」(神奈川県 公立小学校U先生 30代)
「高学年の子どもたちが忙しくなります。放送委員は運動会の実況をしたり音楽をかけたりする準備があるし、リレーや応援団の練習がある子もいる。そういうのに疲れて、運動会がいやになってしまう子もいました」(神奈川県 公立小学校N先生 50代)
なるほど、もちろん運動会の練習を楽しみにする子どもも多いのでしょうが、一方ではこんなふうに疲れてしまう子や、気力がそがれてしまう子どもたちも、少なからずいるのでしょう。