「まさかやー!」は視聴者のセリフ
“超展開”はさらに訪れる。大事な客に失礼な口をきいたり無知すぎることでオーナーに「クビ」を言い渡される暢子。その撤回の条件として、新聞社の「ボーヤ」として社会勉強してくるよう命じられる。あまりにも突然の舞台転換、新聞編が5月30日から唐突に始まってしまった。
その新聞社で、暢子の少女時代に東京から転校し仲良くなった和彦(宮沢氷魚)が勤務しており、偶然の再会を果たす。しかも、暢子が下宿する沖縄タウン、横浜・鶴見の同じ場所で暮らすことになって、ここでもバッタリ。暢子の口癖の「まさかやー!」の連続である。
「このご都合主義は、当初から指摘されていることではあるのですが、『まさかやー!』は、視聴者のほうが言いたいのではないでしょうか(笑)」(同前)
この超展開ぶりには、すっかり定着した“朝ドラ受け”を担う、『あさイチ』の華丸大吉も、気の利いたコメントを生み出すのが正直苦しそうな日も見受けられる。とはいえ、「ご都合主義な展開や、なぜか騒動の中心になるもののなんだかんだで解決していく前向きヒロインは、かつての朝ドラの定番といっちゃ定番ではあるんです」と、あるドラマウォッチャーは言う。
「いじめられても明るく希望を胸にがんばっていく、さらに根拠のない自信があり、なぜか周囲の人たちが味方をしてくれる。暢子のキャラは、いわゆるテンプレ的にいわれている朝ドラヒロイン像に近い。都合のいい展開もそうですが、典型的な朝ドラという見方もできなくはありません」
『あさイチ』の受けや、SNSでの盛り上がりもすべて含めて楽しむという、新しい試聴法の可能性を、前出のドラマウォッチャーは語る。
「気になった部分を反省会のタグをつけてツイートするわけですが、そんな部分をハッシュタグ検索することで、自分と同じような感想を持つ『仲間ツイート』を見つけ、『やっぱりそうだよね』と共感する。
あさイチの“朝ドラ受け”もそうです。大吉さんがなんともいえない笑顔をしてた、華丸さんが暢子やにーにーに、こうしたほうがいいと叫んだ、そこでもまた共感する。いよいよ“#ちむどんどんを見てツッコもう”という、粗さを笑うタグまで登場する域に突入しています。もはや、作品と視聴者の1対1でなく、作品を取り巻く空気すべてをみんなでツッコミながら笑って楽しむ新しいスタイルの楽しみ方ができる実験的な朝ドラになってきているのかもしれません(笑)」
作品はようやく3分の1を消化したところ。この先、新聞編のように、全く予測もつかない角度からの“超展開”がいくつも待ちうけているかもしれない。そして最終的にどう着地するのかも全く予測がつかないが、放送終了後には、ある意味での“ロス”が発生するような気もしてきた。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉