洗脳する側、される側の共通点
ママ友が絡む虐待死事件においては、なぜそこまでママ友の言うことを聞いてしまったのか、ということに関心が集まる。洗脳事件においてありがちな、金を巻き上げるといったことはママ友事件においては実はさほど重要ではないように思う。
この大阪の事件でも、実際に金のやり取りはあったがそれは月額2万円、謝礼の域を出ないものだった。
それよりも、洗脳する側される側の個々を見てみると、面白いほどよく似ている。世話焼きで親身に相談に乗ってくれる頼りがいのある人。すべてではないが、どっしり体型が多いのも安心感につながる。ただ幼いころからそんなに目立っていたわけではなく、ママ友ネットワークだけがすべてで、一歩その外に出ると実は誰からも相手にされないという不満を抱えている。現実の自分を受け止められていないのだ。
一方の洗脳される側は、ママ友に出会うまではとにかく頑張って真面目に生きてきた人が多いように思う。ただ、余裕のなさもあるのか、イレギュラーなことが起こると自分で考えたり対処したりできず、身近な誰かに縋ってしまうようなタイプ。
自分で考えることを放棄しているからこそ、ママ友の言うことだけを鵜呑みにして離婚や引っ越しまでしてしまうのだ。
その最悪のケースが、我が子への信じられない仕打ちである。
大阪の事件では、裁判所が「(ママ友に)丸投げしたほうが楽だと気付いたのではないか」と母親の心情に言及していることからも、洗脳された側にもある種他人に任せることで責任放棄できるといった「狡さ」があるのかもしれない。
この事件が発覚した平成16年には、大阪・岸和田で当時中学3年生だった少年が、実父と継母から同じように監禁され餓死寸前となる事件も起きていた。
ママ友の洗脳事件に限定すれば、1999年(平成11年)ひたちなか市で友人の6歳の子を共謀して虐待死させた女が逮捕され、また愛知県では逮捕起訴こそされなかったが、刑事裁判で「共同正犯」と認定された女も、友人の子の問題行動をでっちあげて母親を翻弄し、せっかん死させたという事件もあった。
いずれも、家族ら周囲との間に溝を作らせ孤立させる、子どもの問題行動をでっちあげて不安を煽る、荒唐無稽な嘘を信じ込ませるなど経過は似ている。
子育てはときに孤独で、そんなときに気が合うだけでなくどんな相談にもアドバイスをくれる頼もしいママ友に出会ったら。
私は大丈夫、そう思っていても人の心は脆い。彼女たちもみな、自分は大丈夫と思っていたはずだから。
読売新聞社 平成15年2月4日中部朝刊、平成16年3月5日東京夕刊、3月6日大阪夕刊、3月8日配信
四国新聞社 平成16年3月6日朝刊
沖縄タイムス社 平成16年3月6日朝刊
佐賀新聞 平成16年3月6日
産経新聞社 平成16年3月6日東京朝刊、大阪朝刊、3月8日大阪夕刊、平成17年10月27日大阪朝刊
朝日新聞社 平成16年3月6日朝刊、大阪夕刊、3月7日東京朝刊
毎日新聞社 平成15年1月20日中部朝刊、平成17年9月10日、10月27日大阪朝刊
NHKニュース 平成16年4月16日
中日新聞社 平成15年3月6日夕刊、3月21日朝刊
本日の気ままな事件日記
2005年度家族法ゼミ
「殺人者はいかに誕生したか」 長谷川博一 著(新潮社)
事件備忘録@中の人
昭和から平成にかけて起きた事件を「備忘録」として独自に取材。裁判資料や当時の報道などから、事件が起きた経緯やそこに見える人間関係、その人物が過ごしてきた人生に迫る。現在進行形の事件の裁判傍聴も。
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