サービスと機器の併用で見守りを
では、どうやったら遠距離での親の見守りができるのか。工藤さんがポイントとして挙げるのは、「1. サービスの利用」「2. ツールの導入」「3. 地域のつながり」の3つ。
「1.は公的な介護保険サービスが代表格。親の様子から介護の必要性を感じたら、いちばんに手続きすべきです。この分野は有料のサービスほど確実といえます。
2.は親の見守りに適したIT関連のツールの活用。スマホで使えるなど簡単かつ便利なものが数多くあります。
3.は親族や地域の人など実家の近くに住む人たち。ただし、頼れるかどうかの見極めが必要です。3つをうまく組み合わせれば、困難と思いがちな遠距離の見守りを実現できるでしょう」
自身の仕事や生活が守れる一方、離れて親を見守ることに後ろめたさを感じる人もいるだろう。だがその行動がプラスに働く部分もあるという。
「同居せず親だけで暮らす場合は、家事などを自分たちでやらなければなりません。必然的に自立が促されて、筋力が保たれる健康面の利点も。また認知症介護でいえば、親だけで生活したほうが症状は軽いという医者の意見もあります。認知症は周囲環境に影響を受けやすく、口うるさい家族が近くにいると、かえって症状の悪化を招くのです」
とはいえ、不安は尽きない。「高齢者は緊急時に連絡先のメモが出てこなかったり、スマホを使いこなせなかったりするもの。緊急連絡先などは、見える化することが大切」
工藤さん監修の付録『もしものときのお守りシート』の活用と合わせ、遠距離での親の見守り方を学ぼう。(週刊女性・7月5日号本誌の付録)
複数の目で見守るのが大切!いちばん頼れたものは?
遠距離で親を見守る備えの第一歩は、「いざというときに頼れるサービスや人をリストアップしておくこと」と工藤さん。頼れるサービスの筆頭は前述した介護保険サービス。65歳以上の親が介護認定されたら、デイサービスや訪問介護などのサービスを受けられる。
「介護の相談は各自治体の『地域包括支援センター(以下、包括)』が窓口です。包括を知らない人が多いので、親の住む地域の包括の場所、連絡先を調べて“もしものときのお守りシート”に記載しておくといいでしょう。介護保険サービスにより、決まった日時に訪問看護師、ヘルパーといったプロの目で見守る態勢を築けます」
民間の見守りサービスを利用するのも手。郵便局、警備会社などが提供している。
「見守りサービスは有料ですが、その分、確実に対応してもらえます。ただ公的なサービスに比べて費用負担は重く、認知症などに対する理解度が低いのは否めません」
一方、頼れる人は親族・親戚、親の友人・知人、子の友人・知人、ご近所さんなど。
「親の様子を見てきてほしいと依頼したとき、確実に対応してくれるか、認知症への理解はあるかなどを踏まえ、信頼できる人を優先すべきです」