極端な二択を迫る「二分法の誤謬」は世にあふれている
ひろゆき氏は「遅刻しても成果を出せる人」と「遅刻しないで、成果をまったく出していない人」をくらべたツイートをしています。これって、よく考えるとヘンだと思いませんか? 世の中には遅刻をする人としない人がいて、成果を上げられる人と上げられない人がいます。ということは、
(1)遅刻をするが、成果を上げられる人
(2)遅刻をするが、成果を上げられない人
(3)遅刻をしないで、成果を上げられる人
(4)遅刻をしないで、成果を上げられない人
の4パターンにわけられるわけです。しかし、ひろゆき氏は(1)と(3)の極端な例だけをあげています。選択肢が他にもあるのに、あえて選択肢を2つに狭めることを、心理学では「二分法の誤謬(ごびゅう)」と呼んでいます。
誤謬とは「間違えること」や「間違い」という意味の言葉です。多くの人にとって「二分法の誤謬」は耳慣れない言葉ではあるでしょうが、実は世の中のここかしこにあふれています。
女子が脱毛を怠っていたら、彼氏にフラれてしまったというような動画広告を見たことがある人は多いのではないでしょうか。ああいう広告は暗に「脱毛せずにフラれるか、脱毛して円満かを選べ」と二択を迫っていると言えるでしょう。彼氏とうまくいっていない自覚がある人や、自分に自信がない人ほど「脱毛しないとフラれちゃう!」と思いこんでしまいそうですが、冷静に考えてみれば、脱毛したってフラれる可能性があることに気づくはずです。
「二分法の誤謬」は選択肢が少ないために、情報の受け手が極限状態に追い込まれ、自分に不利な判断をしてしまうとされています。また「二分法の誤謬」に触れると、自分も「敵か味方か」「成功か失敗か」というような極端な解釈をするようになるとも言われています。
職場でも友達や恋人関係でも、誰かと一緒にいれば時々イラっとすることはあるでしょう。そんなときに「敵か味方か」というような極端な二択思考を持っていると、周りがすべて敵に見えてきたり、「誰も自分の味方ではない」と孤独に陥ってしまうのではないでしょうか。こんな時は周囲に助けを求めてほしいものですが、二択思考の人は周囲に何か言われると「説教してきたから、敵」とますます自分の殻にとじこもってしまう可能性があります。「二分法の誤謬」は情報の受け手に悪影響を及ぼすのです。