ニートの兄がいるから、結婚に二の足を踏んでしまう
さなえさん(41歳、仮名)が入会面談にやってきました。上場企業で働くさなえさんは、現在1人暮らし。700万円近い年収があり、自立した女性でした。
面談ルームで、彼女は言いました。
「30代半ばから4年ほどお付き合いしていた同い年の男性がいました。結婚の話も何度か出たのですが、どうしても一歩が踏み出せなくて。相手は、結婚して子どもを授かり、家庭が築きたかったようで、振られてしまいました。ただ、私もこの先一人で生きていくのは寂しいし、パートナーを探したいなという気持ちに最近なってきたんです」
なぜ、さなえさんが結婚に踏み出せないでいたのか。それは、6つ上のお兄さんのことが引っ掛かっていました。
「兄は、私とは違って小さなころから勉強ができる優等生で、親の自慢の息子でした。大学を卒業後は、大企業に就職したのですが、27歳のとき、会社の人間関係がうまくいかなくて、会社に行けなくなったんです。病院でうつ病だと診断されました。
ずっと順風満帆に生きてきた人だったので、それが生まれて初めての挫折だったのだと思います。しばらく休職していたんですが、結局はその会社を辞めて、以来、再就職しては退職を繰り返して、40を過ぎたころから、引きこもりになってしまったんです」
お兄様は現在、年老いた親の年金で、実家暮らしているそうです。
「私が、前の恋人との結婚に踏み切れなかったのも、ニートの兄がいたからです。兄のことを聞かれても話を濁していたのですが、結婚となったら正直に話さないといけない。40代後半になって、全く働いていない兄が、今後社会復帰できるとは思えないんですね。親が生きているうちは、親のお金で生活できるでしょうけど、いなくなったらどうするのかなって。私は、面倒を見たくないけれど、兄妹だと、全く知らん顔もできない。こんな兄がいるのに、私は結婚できるのでしょうか?」
私は、さなえさんに言いました。
「さなえさんは、年収もしっかりあって自立しているし、お兄様とは別人格。未来をマイナス方向に考えなくてもいいのでは? 親がいなくなってから、お兄様の面倒は誰が見るのか。知らん顔はできないという気持ちもわかるのですが、それはそのときになって考えたらいいと思いますよ」
未来をプラスに考えるかマイナスに考えるかは、自分次第。ただマイナスに考えていたら、今、前向きな行動が起こせず、幸せを逃してしまうのではないでしょうか。