1980年代後半から'90年代にかけ、CM女王と呼ばれ、紹介した本が売れたりもした。
一世を風靡した元アイドルの人生は安泰
'97年には、当時の夫だった永瀬正敏と「大人の部活動」というアート展を開催。漫画家のカトリーヌあやこから「8月31日にあせって作った夏休みの宿題かいッ?」などとちゃかされもしたが、そんなイベントが成立するほど、一定数の人たちからセンスを支持されてもいたのだ。
そんな自分が今の世の中を不満に思うのだから、そういう人はほかにもいるはず、それを確かめたい、という感覚なのではないか。自分と似た「みんな」が投票に行き、実現された社会でならもっと「役に立つ仕事」や「自分なりの生き方」ができると期待してもいるのだろう。
しかし、彼女は4年前、デビュー以来所属していた業界最強クラスの芸能事務所から独立。その際のコメントでは「ご家庭」のある豊原功補との「恋愛関係」も公表した。
つまり、権力側から降り、私生活でも逆風を浴びがちな生き方を選択したのである。それはどこか、一時は与党だった旧・民主党系政治家の苦闘にも重なるものだ。
とはいえ、そこには一種の気楽さもある。日本がよほどの非常時にならない限り、投票率が爆上がりすることはなく、おかげで、みんなが投票に行きさえすれば、自分が満足できる社会が実現するのに、という幻想をずっと抱き続けることができるからだ。
また、彼女には昔を懐かしんでくれる同世代のファンもいる。最近、同期でもある中森明菜との思い出話をラジオで語り、話題になったが、そういうものにも需要はあるだろう。
幻想にすがるもよし、思い出に浸るもよし。一世を風靡した元アイドルの人生は、世の中が変わらなくてもわりと安泰なのだ。
PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる) アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)