バスローブやカーテン、客室のテレビまで持って帰った客も

 中には吐しゃ物からノロウイルスなどに感染するリスクもある。安達さん。自身も嘔吐した宿泊客の後始末をした際、ノロウイルスに感染した経験もあった。

 さらに最近、業界関係者を悩ませるのは『バズり』目的のSNS投稿だ。

ある若者たちは宿泊先のホテルで即席ラーメンを作ったのですが、器がなかったため浴室の洗面ボウルを器代わりにしてラーメンを食べていた様子をSNSに投稿し、炎上していました」(前出・旅行雑誌編集者)

ホテル内での過ごし方にもマナーやモラルが問われている ※写真はイメージです
ホテル内での過ごし方にもマナーやモラルが問われている ※写真はイメージです
【写真】解説する弁護士の佐山洸二郎さん

 こんな行為はありえないレベル、と安達さん。は憤る。

「ホテル側もほかの客に迷惑になるので絶対にやめてほしい。宿泊先でトンデモないことをしでかした人たちの情報がSNSで拡散され、まねをする人が出てきてしまうことを危惧しています。安心安全を提供するのがホテルなのでこうしたことをされるのはデメリットでしかないんです」(安達さん。以下同)

 ほかにも安達さん。らホテルマンをあ然とさせたのは『なんでも持って帰ってしまう客』。バスローブやカーテン、客室のテレビまで持って帰ってしまった人もいたとか……。

注意すると普通に謝ってくれるんです。宿泊マナーを知らなかったり、あまり深く考えずにその場のノリでやってしまった、という感覚なのでしょうか……

 前出の佐山弁護士も注意を呼びかける。

「これから夏休みです。家族旅行やお子さんが友達との旅行を考えていたら親御さんからひと言、注意を呼びかけていただきたい。ホテルの部屋で子どもが間違った過ごし方をして家族が法的な責任を負ったり、損害賠償を支払うという可能性もあります。顧客側には“お客さんは神様です”という意識が根強い場合がありますが、悪質な行為をしたり、不当な要求をした場合、ホテル側が宿泊を断ったり、最悪、訴訟に発展する可能性もあります」

「お金を払っているから何をやってもいい」という安易な考えは当然、通用しない。

「宿泊トラブルでの訴訟や表沙汰になっているものはほんの氷山の一角です。宿泊客自身の身を守るためにもきちんとルールは確認し、気になることがあれば宿泊施設と事前に相談するのが大切」(佐山弁護士)

 せっかくの旅行。苦い思い出にならないように振る舞うことが求められている。

【取材先紹介】

●佐山洸二郎弁護士  神奈川県弁護士会、横浜パートナー法律事務所所属。ホテル・旅館業界に詳しく、トラブル予防や解決などにも尽力。そのほか労働問題などにも詳しい。

●ホテルマン 安達さん。  関東や関西などの宿泊施設で10年以上勤務。現在は現役ホテルマンユーチューバーとしてレビューなどを発信する『ホテルマン「安達さん。」』を配信