選手の人種に対しても、織田は踏み込む。
男子400mハードル決勝では、ノルウェーの選手に対し、
「すごい白人選手が出て来たと思います」
「すごい選手が出て来た」で通じるところを「白人選手」と織田は伝える。一方で、「すごい黒人選手が出て来た」という表現を耳にすることはなかった。
「ダメダメダメ、メダルなんて望んでない」
男子200mを走った日本人選手が、リレーについて聞かれた際の織田は、失礼極まりなかった。
「今まで日本はメダルを取ってきているので、メダルを目指して頑張りたいと思います」
と選手が高らかに希望を宣言した。それに対して織田は、
「ダメダメダメ、そんなこと思っちゃダメ。メダルなんて望んでないから、今回。そんなの望まなくていい。なぜならば今回は、1回もリレーに出たことのないメンバーしか残ってないから」
「ダメ」を連呼するのは失礼の極みだし、リレーに出たことのないメンバーだからメダルは無理と決めつける理不尽で浅すぎる思考。
後輩にも慕われているというアメリカの女子選手を紹介する際には、
「アメリカ(選手の中)で、こんなにできた人はいないと思います」
と身勝手な思い込み全開。「こんなにできた人はいないと思います」で十分な表現なのに、「アメリカで」と検証不能な表現を加えてしまう。
22歳の女子選手に対する発言は、多様性の現代の真逆を行くそれだった。
「ママさんになったアリソン(・フェリックス)のように、逆に若くして先に産んで、(競技に)戻って来るのを早くして、記録をばッと出す選手になるのか、妄想が止まらない」
と、人の人生を勝手に決めつける、出産することを勝手に決めつけるという暴走。これには隣の中井フリーアナも、
「いろんな生き方がありますね」
と返すだけだった。
中継を通して感じ取れたのは、偏見が透けて見え、時代に合わせて言葉のバージョンアップを怠った織田の、自信たっぷりの伝える力。
1997年から務めた織田&中井のメインキャスターコンビも、今回で仕事納めになる。
中井フリーアナ! お疲れさまでした。
〈取材・文/薮入うらら〉