氷川きよしはヴィジュアル系

 それを裏付けるように、実際にロックの要素を取り入れる演歌歌手も少なくない。わかりやすいところでは、人気アニメ『ドラゴンボール超』のオープニングテーマをロック歌手ばりに見事に歌いあげた氷川きよしが記憶に新しい。

エナメルのホットパンツ&ニーハイブーツで『限界突破×サバイバー』を熱唱('19年) 撮影/廣瀬靖士
エナメルのホットパンツ&ニーハイブーツで『限界突破×サバイバー』を熱唱('19年) 撮影/廣瀬靖士
【写真】透けて見える生足がセクシーな氷川きよし

「衣装や演出、メイクなどはヴィジュアル系のロックアーティストといっても遜色ないですし、楽曲の『限界突破×サバイバー』は演歌のカテゴリーではありません。ほかにもクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』の日本語カバーを歌ったりなど、ロックを取り入れるというか、正面から取り組んでいますね」

 逆に、ロック側からのアプローチの例もあげる。

「デーモン閣下が、北島三郎さんの『与作』や谷村新司さんの『昴』などの名曲をカバーしています。原曲の魅力と閣下の歌唱力で見事にロック演歌が融合している印象です」

 古くは坂本冬美が忌野清志郎・細野晴臣とユニット『HIS』を組んでロックに挑戦したり、藤あや子はもともとエアロスミスやボン・ジョヴィの大ファンであることも有名だ。また神野美伽がかつてロックフェスに登場して『りんご追分』を熱唱し、大好評だったことも。

ロックファンも平均年齢が高齢化しています。ビートルズ世代はもう60歳以上。ロックに親しんだ世代がシニアに突入したことで、“大人の聴く音楽”である演歌ロックの融合は、この世代にとって耳なじみのいいものなのかもしれません。これからもこの現象は増えていきそうですね」

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〈取材・文/渋谷恭太郎〉