――俳優業のほうは?
「俳優の世界は今、適材適所で人を使うという業界ではなくなっているし、後ろ盾がないとダメになっている。この店にも知り合いの映像監督さんが来てくれて“脚本を直したら出て″なんて言ってくれますが、それも実現するかどうかはわからないですね。
15年も役者をやってないヤツが“はい、ただいま″で通用する世界ではないですよ。もっと気合い入れないとダメでしょって思いたいし」
――今は家族のために、飲食店を続けるしかない?
「そう思ってここに来たのが1年前。人と接するのは好きですから。お客さんに"この店に俳優がいるんですか?"って聞かれたことがあって、"俺です"って言ったらビックリしてました(笑) 」
伊豆の山中にいる奥さんと子どもたちの近況を話すと、
「みんな、いい子でしょ」
と満面の笑みを浮かべた。離れていても、松岡はいつも家族を思っている。
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伊豆の山奥での暮らしを始めて11年。松岡家はスマホがなくても、お金がなくても、日常の些細なことを楽しんでいる。幸せな田舎生活を維持するため都会で働く一家の主人・松岡は、家族のことを常にいちばんに考えて今も懸命に生きている。