安倍晋三元首相を銃撃し、逮捕された山上徹也容疑者の母親が謝罪の会見を開く意向を示している。山上容疑者の伯父によると今年7月、事件後に身を寄せていた伯父の家からも出て行ったという。旧統一教会は「(母親が会見することを)全く知らない」とテレビ番組の取材にコメントしている。
事件が起きた7月8日以降、メディアで取り上げられなかった日は一度もなかった安倍元首相銃撃事件。母親の多額献金によって破産したことが犯行動機のひとつとされている中、その母親による会見という展開に再び注目が集まっている。
だが、事件当時、混乱の中、女子高生が大事故に巻き込まれる可能性もあったことはほとんど知られていない。今、新たな局面を迎えた安倍元首相銃撃事件を振り返る。
(以下は、2022年7月11日に配信した記事の再掲載です)
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「警備にあたっていた私服のSPは13、4人ですね。現役ではなく、元首相であれば妥当な人数と言えます。問題は人数ではない。このような杜撰な警備体制ではたとえ警官が1万人いても、事件は起きている」
そう厳しい口調で話すのは、元大阪府警刑事の犯罪ジャーナリスト・中島正純氏。
7月8日、日本中を震撼させる事件が起きた。奈良市の近鉄大和西大寺駅前で安倍晋三元首相が自民党候補の応援演説中、手製のハンドガンで撃たれたのだ。殺人未遂の現行犯で逮捕されたのは、奈良市内に住む元海上自衛隊員の無職・山上徹也容疑者(41)。安倍元首相は救急車とドクターヘリを乗り継いで奈良県立医科大付属病院に搬送されるも、同日午後5時すぎに死亡が確認された。
中島氏は事件当日の夕方には現場入りし、SNS上の動画もチェックしながら事件が起きた原因を徹底的に追求。たどりついた答えが冒頭の言葉だった。
事件当日、SPはどのように配置されていたのか。安倍元首相はガードレールで囲まれた場所で演説していた。安倍元首相の前には多くの聴衆がひしめいていたが、後方は車道を挟んで、がら空きの状態だった。
「安倍元首相専属のSP1人、奈良県警や地元警察のSP十数人で警備にあたっていた。おそらく専属のSPは安倍元首相の背中からみて左斜め後ろにいた男性で、安倍元首相に背中を向けて目線は左斜め前にあった。山上容疑者はその先にいたので、SPもおそらく目視はしているはずですが、なぜかスルーしている」(中島氏、以下同)
背後からの襲撃に全く備えていないSP
反対となる右側に、SPが2人いたが、
「彼らはともに前しか見ていなかった。つまり、背後からの襲撃に全く備えていない。安倍元首相の近距離にいたのはこの3人だけ」
そのほかのSPはどこにいたのかというと、
「聴衆の中に数名いたのを確認できました。はっきり言って、この警備人数で聴衆の中に配置する意味は全くないでしょう。聴衆の中ではなくて、前に立たせるべきだった。そうすれば聴衆者の中に不審者がいないかを確認できて、不審者が突然飛び出してきてもすぐに対処できる。聴衆の中にいたら、事が起きた時に必ず出遅れてしまう」
それが現実のものとなってしまう。一発目の銃声が鳴り響き、続く二発目で安倍元首相は凶弾に倒れた。