「勝手にしろバカ女」と叫ぶモラハラ男

 すみえさん(35歳、仮名)は、としひろさん(35歳、仮名)と成婚退会したのですが、先日、「婚約を解消したので、もう一度そちらで婚活がしたいです」と、連絡を入れてきました。

 面談にやってきたすみえさんに、どんな経緯があって婚約解消になったのかを聞きました。

「結婚が決まってからというもの、なんでも自分で思いのままに決めてしまって、私の意見は無視なんです。二人とも職場が都内なのに、新宿まで電車で1時間半かかるご実家の家を2世帯にして、そこを新居にしようと言い出したんですね」

 通勤時間もさることながら、義父母になる彼のご両親と2世帯とはいえ、同居することにすみえさんは抵抗がありました。

「としひろさんは、『通勤時間がかかるようになっても、親が側にいたほうが、子どもが生まれたときときに面倒を見てもらえるから、すみちゃんも働きやすいでしょう?』って言うんです。自分の親になら甘えられるけれど、義父母にはワガママ言えないし、子育てのことで口出しをされても言い返したりできない。『2世帯は気が重いからそれは避けたい』と伝えたんです」

 その話をしたのが、1泊2日の温泉旅行に行く車の中だったそうです。すると、としひろさんの機嫌がみるみるうちに悪くなっていきました。そんな彼の顔色を見ながら、旅館にチェックインしました。

「部屋に入ると、テレビをつけてずっと観ていたり、スマホをいじっていたりして、こちらを無視しているんです。だから、『外に観光に行きましょうよ?』と誘ったら、『行きたいところがあるなら、1人でどうぞ』って言うんです」

 せっかく楽しみにしていた旅行だったのに、すみえさんは、なんだか悲しい気持ちになりました。そして、涙をこぼしてしまったのです。すると、としひろさんは言いました。

「なんだよ。めんどうくさいなぁ。泣きたいのはこっちだよ」

 それを聞いて、悲しみがだんだんと怒りへと変わっていきました。そして、彼に向かって言い放ったのです。

「いつも自分の意見ばかり押し付けて、なんでも勝手に決めて、私の気持ちなんて全く考えてくれない。こんなふうに無視されていても楽しくないから、私、帰るね!」

 荷物を持って部屋を出て行こうとしたときに、背後から怒鳴り声が聞こえてきました。

「勝手にしろ、このバガ女」

 そして、旅行から帰ってきて、婚約解消となったのです。

「とんでもない、モラハラ男でした。婚約解消になってよかったです。入籍した後だったら、そう簡単に離婚できませんから」

 前出のみさとさんも、ひろみさんも、その後、真剣交際を終了。すみえさんは、婚約解消。せっかく築いてきた関係を壊すのは、勇気がいることですし、悲しい気持ちにもなります。ただ、入籍をしてしまったら、関係を解消するのは“離婚“となり、戸籍にはそれが残ってしまいます。

 私は、いつも会員に言っています。

婚活はいっときのこと、結婚は一生のことよ」

 迷ったときには、いったん立ち止まって、お相手もいろんな角度から見てみることが大切です。100パーセント完璧な人間はいませんし、どんな人にも長所もあれば短所もあります。短所が見えたとき、欠点がわかったとき、そこをも含めて愛せる人なのかを、自分に問いただしてみてください。

 結婚してからの人生は、長い。幸せな日々が紡げる、後悔のない結婚をしていただきたいなと思っています。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊100日で結婚(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル