多少コストをかけても 早く終わらせたかった

 一方、父親の家じまいは母親の片づけとは打って変わる。父親ががんで他界した2017年9月を出発点とし、半年後には家じまいを終えたのだ。

「父は私が18歳のときに家を出て、以来、盛岡市内のマンションに独り住まい。亡くなる数か月前から介護で訪れていたものの、父の家財道具にほとんど思い入れがないので短期間ですんだのでしょう」

 早期処分すべく、父親担当のケアマネジャーに遺品整理業者を紹介してもらう。

「業者に頼めば手間や時間をとられずにすみますが、ネックは金銭負担です。業者の作業日時を限定せず、部屋のカギを渡してあとはお任せにすれば、人件費が安くできる。そう聞いて実行しました」

 1週間後、作業は終了。3DKのマンションで1トンのゴミの量に驚いたが、相場約20万円の負担が13万円ですんだ。

「名義変更などの手続きを終え、マンションを売りに出しました。所有している間は毎月の管理費、修繕積立金を負担しなければなりません。念のため火災保険にも加入し、こちらは水漏れのトラブルが発生して保険適用となったので正解でしたね」

 マンションは築30年以上。“負動産”と思っていたが、立地の良さから3か月後に買い手が現れた。

「葬儀やマンションリフォーム代など持ち出しが数百万円に達していたため、やっと回収できると安堵しました」

 父親との関係は他界する数年前に悪化し、家じまいをする間、もやもやすることも。

「それでも、子煩悩だった昔の父が自然と思い起こされた。だからこそ看取りから遺品整理まで行うことができました。やっていなかったらきっと後悔していたと思います」

工藤広伸さん
 1972年、岩手県盛岡市生まれ。遠距離介護の経験をもとに、執筆活動および全国の自治体、企業などで講演を行う。現在も母親の遠距離介護を継続中。著書多数。ブログ「40歳からの遠距離介護」https://40kaigo.net/

取材・文/百瀬康司