民放プロデューサーの『ちむどんどん』評
「ストーリーに関しては“あれはないね"と思っている局員は多いです。でもそれを口に出す人はいない。ドラマの良し悪しはほぼ脚本で決まると言われていますが、ドラマを非難することは作っている制作サイドを非難することになりますから。そんなことを言えるのは会長しかいないでしょ」(NHK関係者)
NHKの朝ドラの場合、脚本が出来上がっていても放送が進むに連れて、周りの声を聞きながら色々手直しをして行くというのはよく知られている話だ。脇、あるいはちょい役で出演した俳優が評判になり人気が出てくると、急に出番が増えたりすることがある
また、よほど大御所の脚本家を起用した場合を除いて、脚本を脚本家にすべて任せることはせず、チームで脚本を練っていく手法を取ることがあるという。
『NHKドラマガイド』によると、今回の『ちむどんどん』は脚本家の羽原大介氏のほかに制作統括とチーフ演出が加わり、3人で脚本を揉んで言ったと、羽原氏が語っている。これだけ非難の声が上がっているのを3人が知らないはずがない。それでも変わらず“まさかやー"なシーンが続くのはどうしたことなのか。
民放キー局で長年ドラマ制作に携わったベテランプロデューサーはこう語る。
「ウチの局ではストーリーに関しては1人の脚本家にお任せする方式をとっていますね。その代わり脚本家は絶対ですよ。本に口出しすることはしません。海外では複数の脚本家が初期の段階からアイデアを出し合う“チーム制"で話を練るのが当たり前で、『ちむどんどん』はそれを採用したかたちでしょう。ただ、その方針が裏目に出たケースなのではないでしょうか。
あれも描きたい、この要素も入れたいといった個々の意見が渋滞してしまっている印象ですね。作中では沖縄料理のレシピを紹介するくだりが頻出するのですが、グルメドラマでもないのに時間を割いてまでわざわざやる必要があるのか。レシピがバズることを想定したのかも。また、川口春奈さん、仲間由紀恵さんらに焦点を当てたストーリーも多く、いろいろと詰め込みに思えてきますね……」
非難の声がなくならないが幸い視聴率がガタ落ちしている様子はない。それは朝ドラが視聴習慣となっている人たちが多いということもあるが、ネットを見ても分かるようにツッコミを入れることが楽しくて見ている人が多いのに加え、“一周回って"このようなムーブメントが起きているのだという。
「話題になっていることで興味を持ち、#ちむどんどん反省会に参加しようと、今になって見始めた人がいるのは確かです」(テレビ誌ライター)
もはや“炎上商法"と化した感もあるが、残り1か月、この先どんな“珍事"が起き、ラストはどうなるか視聴者はますます“ちむどんどん"しちゃうのでは───。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之> ◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。