10年不倫の結末はあっけなく
そんな彼との関係に変化の兆しが表れたのは、不倫10年目のことだった。
「毎日彼は私のマンションで夕食を食べます。私の手料理を褒める回数もだんだん少なくなって、何げなく“最近私たち、会話がないわね”とぼやいたんです。すると彼も頷きました。出会ったころのときめきも失せてしまい、彼が夜になると必ず子どもたちのいる自宅に戻ろうとする様子にも、飽き飽きしていました」
ズルズルとした関係で過ぎた10年。とうとう11年目の正月、初詣に出かけた帰りに蕎麦屋で酒を飲んでいるうちに、どちらからともなく「別れようか」という話が出た。
「別れ話は淡々と終わりました」
熟しすぎた果実が腐敗して地面に落ちてしまったように、麻由美さんの10年不倫の最後はあっけなかった。10年にわたる2人の気持ちのズレが、澱のようにたまっていたことがわかったという。
その後、麻由美さんは再び引っ越しをして転職した。皮肉にも、元夫から紹介された会社で働きながら婚活中だ。再婚した元夫は2児のパパ。自分の思いが朽ちるまで、ひとりの男性を思い続けた麻由美さんと新しい生活を手に入れた元夫。一体どちらが幸せなのだろう─。
「後悔はしていません。あんなに好きになった人はいなかったから」
見栄ではなく心からそう思っていると麻由美さん。燃え尽きるまでの思い出はきっと彼も同じだから。
取材・文/夏目かをる